第5話 日本人ママ友に思ったこと
私が日本語講師をすると聞くなり、日本人ママ友・Aさんは目を丸くして「えー!すごいですね」と驚いた。私より少し年下で専業主婦。同じく国際結婚仲間だが、すでに在住歴10年以上。
「Aさんも興味あるなら一緒にどうかな。クラスがいくつかあるけど他に講師がいないから私が全部やるんだよね。1クラス、やってみたら」
「私にはムリです~」、即答だった。
大卒で留学経験もあるAさんは日本語講師の勉強もしたらしく、日本語学校で模擬授業の経験もある。10年選手だもの、言葉だって私よりできる。
むしろ、ムリな理由がなくない?
ところがね、「ちゃんと準備して臨まないと不安なタイプ」らしい。
時折、負けず嫌いかなと思われる言動を感じていたので、失敗したくない意識が高いのかも。しかし、他人から見ると宝の持ち腐れだなと思う。いや、おせっかいは禁物と思うからここに書いてるんだけどね。
完璧主義と言えば聞こえはいいが、10年住んでもバイトさえしたことがないのは、慎重を通り越して臆病だなと感じてしまった。
先週、そんなAさんの後ろ姿を見かけた。両手に子どもたちの習い事バッグ2つと学校カバンをぶら下げている。塾のはしごがあるため、都度、カバンを届けたり受け取ったりしているのだ。
異国でがんばって子育てしているAさんはすごいし偉い。
でも尊敬の念よりも、どこか残念な気がしてしまう。
夫の国に来て、無力な外国人を実感した私は「両手が空っぽ」な気がした。
けどそれは語学の拙さによるものであって、ひとりの人間として40代の私の手には何かしらあるはずだと思い直した。
Aさんが両手に持つカバンたちが、左右に揺れている。Aさんの手のひら奥にぐいぐい押し込まれている彼女の能力は、解放される日が来るのだろうか。
いやほんと、余計なお世話ですいません。
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