第4話 できるようになるまで待たない
結婚してからの海外暮らしは、初めてではない。
外国人夫の海外駐在で、どちらの母国でもない場所で暮らした。
夫婦共に外国語が好きで好奇心旺盛。
「やっぱ国際結婚はどちらの国でもない場所がベストだよね」と連帯感も高まった。
ところが、わずかな期間で日本に戻されてしまう。
子どもたちが小さかったので、「幼稚園に行かせたら自分の習い事でも」なんて思っているうちに終わってしまったのだ。
その時に悟ったのは、「できるようになるまで待つな」。
オトナは何かを「始めない理由」を簡単に見つけられるんだもの。
これが落ち着いたら、費用が貯まったら、運転できるようになったら、語学が上達したら。
自分を説得するのがうまくなり、「いやーもう12月か」と今年も【やってみたかったアレ】を見ないふりして、クリスマスツリーを見上げるのだ。
さて。
夫の母国に移住して2年足らずで、義母が日本語講師の仕事を持ってきた。
特にやりたかった訳ではないが、語学力ヨチヨチ外国人の私が「大きい顔」ができる舞台ではないか。
私の下手な発音に苦笑するレジのおばちゃん、食堂の兄ちゃんよ。私は日本語が一番、上手なのだよ。だからネイティブの先生なのだよ。むん、と鼻息荒くなる。
何もできない人扱いからの脱却!おまけに日本よりも先生を大事にしてくれる文化。
でも、教室で教えた経験はないし…文法の説明なんて相手の言葉ではできないかも…もっとできるようになってから…という思考は捨てた。
やってみてから考えるさー、といきなりの前向き?オキナワン発動で、私は異国で先生になった。
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