第8話 ベリーダンスで先輩を思い出す
同年代か若い友達を作って、きゃっきゃうふふと、現地語を習得しようと思ったもくろみは、平均年齢オーバー60の中で儚く崩れた。
いや、いいほうに考えれば「英語ができる人もいない」→「現地語習得するっきゃない」。自分が最年少だから、露出も恥ずかしくないはず。ていうか、姉さんたち誰も恥ずかしがってないけど。
実は、結婚前に東京でベリーダンス教室に通ったことがある。当時はブームだった。
職場のアラフォー先輩が「私も習っているの」と勧めてくれたのがきっかけだ。
先輩は色白で、女優のような顔立ちは見とれるほど美しかった。
ところが、である。
憧れの先輩が急に太り始めた。今思えば、更年期の始まりでホルモンバランスが崩れたのだろう。当時は知らなくて、職場でも変貌ぶりが噂になった。小顔で美形はそのままだが、身体は着ぐるみ化しつつある。
さらにところが、である。
先輩が創刊されたばかりのベリー雑誌にモデルとして掲載されたのだ。だいぶぽっちゃり、というかぼってりしたお腹を堂々と出して。
20代の私は絶句してしまった。
太った腹は隠すべし、二の腕だって覆うべし、30過ぎたら膝出すな、という日本的価値観がしみついていた。
えー、先輩どうしちゃったの…正直、美しい先輩のままでいて欲しかったし、肥えた姿を見たくも晒して欲しくもなかった。
でも今になればふくよかな先輩の魅力が分かるし、女性性の美しさを讃えるベリーダンスらしさだと分かる。
最近『セクシー田中さん』というマンガ&ドラマで、高橋メアリージュン演じるベリーダンス講師が「腹肉は宝」と言った。広めて欲しい言葉ではないか。
そしてやっぱり、先輩は美しかったってことなのだ。
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