第7話 習い事を初めて1年

 30代になってすぐ、外国人と結婚し10年以上が過ぎた。

 「ずっと日本で住むから」が結婚の条件ではなかったものの、夫は留学生として来日以降、日本の会社に就職していたので「母国には戻らない」と言っていた。

 ところが、コロナ禍で帰国できなくなると両親のことが気になった夫。

 会社は行き詰っていて、海外駐在に行かせる約束はコロナを理由に消え失せていた。

 そんなわけで、夫は自国の会社に転職、わが家は子どもたちを連れて移住となったのだ。

 わが子たちは、パパと話す時はパパの言葉オンリーのため完全にバイリンガルだ。

 問題はママ、私であるがリスニングはかろうじてOK、喋るのは苦手だった。

 語学講座も受けるが、同時に「習うより慣れろ」方式で、現地の友達を作るべく習い事を探した。

 踊りが好きなので、自分と同じか少し若い人がいそうな教室を探そう。若い人なら、日本にも興味があるはずだから盛り上がるかも。

 ということで、ベリーダンスに決めた。

 ドキドキ。私が一番おばちゃんかも。ひょっとして、子どもたちのママ友もいたりして。そうだといいなー。

 初日に扉を開けると、あれ・・・がっつり、年齢層が高いではないか。

 えっと、社交ダンスかフラと間違えたかな?と一度、ドアを閉めて入口の文字を慎重に読んだ。

 べりーだんす。ようやく読めるようになった文字をゆっくり、読む。

 間違いなかった。意を決して中に入ると、「若手」と思しき50代後半かな?というお姉さんが駆け寄ってきた。

 「ベリーやったことあります?あ、そう初めてなのね」

 どこかホッとした様子だ。なるほど、一番上手なんだろうなこの人が。

 日本名は覚えにくいと思ったので、適当なディズニープリンセスの名前をあだ名として自己紹介した。ここでは「モアナ」としておこう。

 

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