第12話 目が浄化された話

 友達は日本人、東南アジア出身の夫との間に大学生になる娘がいる。

 他の友達から聞いてはいたが、このお嬢さんが本当に美しかった。

 多様性だなんだ、美の基準はそれぞれ、そもそも外見的な美醜をどうのと言うこと自体をナンセンスという人もいるが。

 美しいものは、美しい。それが正義かどうかじゃなくて、単純に目の前にある美に見とれたのである。

 色白の小顔に大きな瞳が潤み、跳ね上げた黒いアイラインがむしろ邪魔なほど、長いまつげが広がっている。はっきり顔であるが、東南アジアっぽい濃さではなく、K-POPアイドルのようなイマドキ感。芸能人にご対面気分だ。

 お嬢さんの美に触れた翌日、今度はデパートでイケメンに出会った。

 高級ブランドの香水イベント、見るからにモデル事務所からやってきた185センチ超えのイケメンたち。

 香水を買う気が無いので、ムダなセールストークをさせちゃいかんと、道を聞くことにした沖縄おばちゃん(充分、ムダ)。

 ちなみに、私は明らかに外国人なため「ガイジンの特権」を活かして、普段から近くで見たい人に道を聞くことにしている。イケメンポリスとか、おしゃれマダムとかね。海外暮らしはラクじゃないんだから、小さいごほうびよ。

 で、160センチに満たない私のスマホを、だいぶかがんでのぞき込み「ここに行きたいんですね」と、言う美男子。

 リアルに顔の大きさなんて、わが家の小学生レベルに小さい。メイクしているとはいえ、毛穴とヒゲなぞ最初から存在してない。

 自然にカールしたまつ毛は、きっと生まれつきだ。一体、前世でどんだけいいことしてきたのよアナタ。ママはどんなに嬉しいだろうかね、美しく育った息子よ。とすでに気分はお母ちゃんモード。

 テテテ テンキュー

 活舌だけは良いはずの私が、噛みまくるほどに見とれてしまった。

 そんなわけで、2日連続で私の目は浄化された。

 旅先、特に海外では「普段の生活圏に存在しない美」に話しかけることをオススメします。

 

 

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