第12話 私もキスしていいですか? いいですよね??


「さーてと、俺は帰るから小野ちゃんも気をつけて帰ってくれ。じゃあ」

「ちょーっと待ってください?」

「...なんだ?」


 そして小野ちゃんの貼りつけたような笑顔に恐怖した俺は慌てて、その場から逃げ出そうとするが一歩間に合わず小野ちゃんに服の裾を掴まれてしまう。

 くっ。こうなったら強引にでも——。


「もしかして、こうなったら強引にでも振り払って逃げようとしてます?」

「...」


 読まれてる!? だとして、なにか策があるとでも言うのか?


「別にいいですけど、その場合多分また私がこけますよ? 私雑魚なので」

「それどんな脅し!?」


 自虐ネタにもほどがある小野ちゃんの脅し文句(?)。なんか、自信失いすぎて色々とおかしくなってない? この子。


「で、今のはなんですか?」

「「今の」ってなんだ?」

「き、キスですよ。今さっき小野寺ちゃんされてましたよね?? ね? 笹木さんね?」


 少し恥ずかしそうにしながらも頰を膨らませてそんなことを問い詰めてくる小野ちゃん。


「俺に言われてもな」


 しかし、俺としてはこれしか返す言葉がない。


「私とのギューはあんなに拒否するのに。まさか、笹木さんは小野寺ちゃんのこと...」

「そんなわけあるか! そもそも、あれは不意打ちだったから避けようがないだろ」

「嘘ですっ。不意打ちじゃなくても多分笹木さんは避けてません」

「ぐっ」

「いや、そこは否定してください!?」


 俺が何も言い返せずおし黙ると小野ちゃんは少し引いたような表情でそんなツッコミを入れてくる。正直、ドン引きして俺に近寄ってこなくなってもらうのはありだがロリコンと勘違いされるのは流石に嫌すぎるので、補足しておくことにしよう。


「いや、だって避けて泣かれても面倒だし...だったら、小学生のほっぺチューくらいなら別に避ける必要もないかなーと思ってな」

「思ってましたけど、笹木さんって冷めてますよね。勇気出した小野寺ちゃんの姿が一昨日の私みたいでちょっと可哀想に思えてきました...」

「そうか、可哀想に」

「可哀想と思うなら約束守って私と結婚してくださいよっ」

「それは無理」

「ぐぬぬぬぬ...........はっ」

「?」


 ぐぬっていた小野ちゃんだが、突然なにかを閃いたように顔を輝かせる。どうしたのだろうか?


「小野寺ちゃんのキスは避ける必要がないって思ったんですよね?」

「あ、あぁ」

「じゃあ、私もキスしていいですか? いいですよね??」


 すると、小野ちゃんは俺の返事も聞かず至極真面目な顔でそんなことを言う。


「いいわけないだろ」

「でも、実際浮気されたみたいなものなんですからキスくらいしても許されますよね? ね?」


 少し怖い顔をして更にそんなことを言い放つ小野ちゃん。


「浮気もなにも付き合ってないんだが?」

「でも、婚約は受理されました」

「ぐっ...とにかくダメだ」

「なんで私のだけギューもチューもそんなに頑なに拒否するんですかっ」


 俺が断り続けると小野ちゃんは少し涙目になりながら、そう吐き捨て唇を噛む。


「わ、私なんてどうせ身長もなければ胸もなく、精神的にも幼いんですから小野寺ちゃんと同じ枠でキスくらい、いいじゃないですか...うぅ」


 開き直ったようにそんなことを言う小野ちゃん。だが、半泣きである。

 思った以上に先ほどの小野寺ちゃんの無自覚攻撃でダメージを負っていたらしい。


「そんなこと言ってもダメなものはダメだ」

「なんで——」

「だって、小野寺ちゃんにほっぺにキスされても可愛いなくらいで済むけど、小野ちゃんの場合はそうじゃないというか、なんというか。分かるだろ?」

「ふぇ!? えっ?えっ?」


 俺がメンタルをボロボロにされている小野ちゃんをフォローすべく、そう口にすると小野ちゃんは不満顔から一転、なぜか顔を真っ赤に染め上げ戸惑った様子で口をパクパクさせる。


「..........ま、まぁ、そういうことなら〜分からなくもないかもです、はい」


 そしてその後しばらく顔を赤くしたまま自分のほっぺたをつねったり、その場でグルグルと回転したりしていた小野ちゃんだが、ようやく落ち着いたようでコホンと息をつくとそんなことを口にする。何故だか、物凄くご満悦な様子だ。

 それに理由はよく分からないが理解してくれたらしい。俺としてはフォローしただけなんだけど。


「でも、やっぱりキスはします。小野寺ちゃんに先越されて悔しいし、上書きしないとなので」


 これでこの話は終わったと思ったが、小野ちゃんがなにかを決意したかように、突然そうボソッと呟くと俺の方へにじり寄ってくる。


「だから、ダメだって言ってるだろうが」

「この手をどけてください。キスの邪魔です」


 なので、俺が迫る小野ちゃんの頭を手で押し返すが小野ちゃんは尚もなんとか俺の方へ近寄ってこようとする。正直、力の差がありすぎるので絶対に小野ちゃんが近寄ることは出来ないので諦めて貰いたい所だがこの調子じゃ中々折れてくれないだろうなぁ...しょうがない。


「ひゃっ!?」


 俺が暴れる小野ちゃんの手を握ってやると小野ちゃんは可愛らしい声を上げる。


「キスはダメだが、これくらいならいい。どうだ、これで妥協してくれないか?」

「えっ、あっ、いや、そのっ」


 俺が声をかけるが小野ちゃんは顔を朱色に塗りたくると、汗をダラダラと流し目を泳がせ全く聞こえていない模様である。心なしか繋いでいる小野ちゃん手が熱いような...?


「どうしたー? もしかして、体調でも悪いか?」

「っっっっっ!???」


 そこで俺は小野ちゃんの体温を測るべく小野ちゃんの髪をどかしおでこに手を当てる。...やっぱりかなり熱いな。風邪でもあるんじゃ——。


「だ、大丈夫、大丈夫ですからっ。じゃあ、私は今日はこれでっっっ.......あっ、また明日です!」

「おい、ちょっと待て」


 しかし、小野ちゃんは何故か俺の静止も聞かず手で顔を覆うと一方的にそう告げ走って去っていってしまうのだった。



 →→→→→→→→→→→→→→→→→→→→


 自分で攻める分にはいいけど、攻められ耐性はゼロの小野ちゃん。


 次回「昨日、妹を助けてくれたのって貴方?」


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ある日、幼女を助けたら将来結婚したいと言われたので軽い気持ちでオッケー出したらまさかの転校してきた同級生だった件 タカ 536号機 @KATAIESUOKUOK

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