第11話 ロリ(見た目)とロリ(ホンモノ)
「迷子...でしょうかね?」
「多分な」
それを見ていた小野ちゃんと俺は顔を見合わせる。正直、この前は状況は状況だったから助けたが基本的には人と関わりたくないというのが本音だ。まだ明るいし、無視してしまいたいところだ。
「私、声かけて来ますっ!」
しかし、まぁ案の定といった所で小野ちゃんがそう言うと泣きじゃくる女の子の方へと向かって走り出してしまう。
「おい、足まだ治療したばっかりなのに走るなっ」
「大丈夫ですよ、これくら——ぃぃい」
「転びかけてんじゃねぇか!」
俺に向かって余裕と言わんばかりにグッと親指を見せつけてきた小野ちゃんだったが、そのせいで態勢を崩しすんでのところでなんとか踏みとどまる。大丈夫なのだろうか、この子。
「大丈夫? 迷子になっちゃったの? お姉さんが助けてあげられるかもしれないし、落ち着いたらお姉さんに事情を聞かせてくれない?」
「...うみゅう?」
そんなことを思いながら見ていると女の子の目の前まで行った小野ちゃんは、やけにお姉さんをアピールしながらそう声をかける。まぁ、多分小3くらいだろうし見た目的にもお姉さんなのは間違いない。
というか、今思ったが小野ちゃんがこの子を助けるつもりなら別に俺が助ける必要はないよな。
なんなら、小野ちゃんも振り切れて一石二鳥ではなかろうか? ここはひとまず見守ることもしよう。
「お、お姉さん?も迷子?」
「いや、お姉さんは迷子じゃないよ!? だってお姉さんだもんっ」
「じゃあ、ここら辺の場所とか分かるの?」
「はっ、そういえば転校してきたばっかりだからまだあまり詳しくはなかっただった」
「じゃあ、意味ないじゃんっ。ただ、迷子がもう1人増えただけだよぉ。うぅ」
「な、泣かないで。場所はあまり分からないけどお姉さんがついてる! 多分、きっと大丈夫」
「うわーん、なんの根拠もない励ましほど不安になるものないよ〜。しかも、お姉さんお姉さん連呼してるけど多分あんまり年も変わらなさそうだし、全然信用出来ないよぉ」
「年は大分違うよっ!? ちゃんとお姉さんだから」
「1歳、2歳の差が大分???」
「いや、お姉さん高校生。高校生だから!」
「こ、高校生?」
「そう、高校生! これで分かってくれ——」
「うわーん、この人嘘つきだよ〜。もう、何もかも信用出来ないよぉ」
「嘘じゃないから! 本当だから」
「じゃあ、なんで私と背が少ししか変わらなくて、おっぱいもぺったんこで行動の節々が幼いの? 高校生なら、もっと背が大きくてセクシーでクールで大人っぽいんじゃ...」
「...」
「お姉さん?」
「うぅ...ひっく」
「お姉さん、ど、どうしたの?」
「な、なんで、そんな酷いこと言うの??」
「な、なんかごめんね。とりあえず、落ち着こう。ね?」
しかし、俺の淡い期待は水の中に消えて溶けて消えていってしまう。本当に小野ちゃんはなにをやっているのだろうか。これじゃあ、どっちがお姉さんか分かったものではない。
「おーい、大丈夫か?」
「高校生くらいのお兄さんいい所に! このお姉さんが何故か凄く落ち込んでて」
仕方なく俺が駆けつけると女の子は途端に顔をパッと明るくして、すっかり座り込んでしまった小野ちゃんを指差してそんなことを言う。
「身長低くてごめんなさい。貧乳でごめんなさい。行動幼くてごめんなさい」
「おーい、小野ちゃん、大丈夫か?」
くっ、こうなった以上小野ちゃんは戦力として期待出来ないか。いや、正直最初からまぁ無理だろうなとは思っていたが、案の定である。
「このお姉さん小野って言うんだ。ところでお兄さんはお姉さんとどんな関係なの? 兄妹とか?」
俺に恐る恐るといった様子でそんなことを尋ねてくる女の子。ふむ、流石にここは小野ちゃんの名誉挽回の為にもしっかり答えてあげるか。
「いや、同級生なんだよね」
「えっ、じゃあこのお姉さん本当に高校生なの!?」
「そ、そうです、高校生なんです! やっと、分かってくれましたか!」
「あっ、復活した」
途端に元気を取り戻す小野ちゃん。分かりやすいなっ。
「ごめんなさい。やっぱり、どうしても信じられない。だって、身長もおっぱいもないもん」
「あうぅぅぅぅ」
「せめて数秒は持ってくれっ」
しかし、その直後小学生の正直すぎる言葉のナイフによって再び倒れる小野ちゃん。小学生というのは純粋無垢な正直者なだけに残酷な生き物である。流石に可哀想なので体くらいは支えてやるとしよう。
「っはぅ! さ、笹木さん...そのまま、私を抱きしめてください」
「抱きしめるかっ!」
しかし、その途端小野ちゃんが顔を真っ赤にしながらそんなことを言うので、俺は全力でそんなツッコミを入れる。本当に大丈夫なのだろうか、この子。今日だけで心に傷負いすぎてなんか色々壊れちゃってない?
「まぁ、小野ちゃんはいいとして...君は大丈夫? もし、良かったらお兄さんが助けてあげるけど...」
「ほ、本当!? ありがとうです。お兄さんなら頼り甲斐があります」
「かはっ」
小学生の無自覚攻撃によって更にダメージを受ける小野ちゃん。なんか、なんも悪いことしてないのに罪悪感が凄い。
「じゃあまず、良かったら名前を教えてくれないかな? なんて呼べばいいのか分からないし、色々と役に立つから」
「えーと、私は小野寺 天音。よろしくお願いです」
「あー、うん、よろしくね!」
そう言って小野寺ちゃんは俺の手を掴むとブンブンと上下に動かす。対する俺は相手は小学生なので怖がらせることのないように、笑顔で元気にそれに応える。泣かれるのが一番面倒だからな。
「それで小野寺ちゃんはなんで迷っちゃったの?」
「お兄さん、小野寺じゃなくて天音で呼んでほしい」
俺が尋ねると、小野寺ちゃんは少しシュンした顔でそんなことを言う。うーん、小学生心はよく分からない。
「...天音ちゃんはなんで迷っちゃったの?」
「はい、実は
「なるほど
「うん」
俺の言葉に全力で頷きグッと親指を立てる天音ちゃん。
「ちなみにスーパーってなんて名前か分かるかな?」
「ええっと、フワロト?スーパーみたいな名前だったような」
すると天音ちゃんはやや自信なさげにそう応える。
「あぁ、やっぱりあそこね」
まぁ、逃げたとは言え小学生。そこまで移動してはないだろうし、ここら辺にあるスーパーといえばフワトロスーパーくらいだからそうだろうとは思っていたが案の定か。
「じゃあ、逆にあんまり動かずに公園の前で待ってるくらいが丁度いいかな?」
「それはなんで?」
俺の言葉に可愛らしくコテンと首を傾げる天音ちゃん。
「うーん、多分、雲雀お姉さん?も多分今頃全力で探してるだろうしフワトロスーパーに戻ってもあまり意味がなさそう。そもそも動き回るのリスキーだしね。それに小さい子がいきそうな場所なんて公園くらいだし、多分いずれここら辺に来ると思うんだよねぇ」
「なるほど、お兄さん賢い。天才っ」
ただただ当たり前のことを言っただけなのだが、天音ちゃんは目をキラキラとさせてそんなことを言う。純粋な小学生の視線が痛い。
「まぁ、それでも来なかったらついていってあげるから交番に行こう」
「ラジャ! でも、それまでどうしてたら...」
「じゃあ、お兄さんとにらめっこでもして待ってようか?」
「それいいです!!」
「はい、それ私も参加したいです!」
仕方ないので俺がそう提案すると天音ちゃんは目を輝かせ頷き、何故か小野ちゃんも復活しそんなことを言うのだった。
*
「あっ、雲雀お姉ちゃん来たっ!」
「おっ、来たか」
それから10分もしない内に天音ちゃんがそんな声を上げたので、俺もそっちを見てみると同じ高校生くらいであろう女の子がこちらに向かって走ってくるのが見えた。恐らく、あれが雲雀さんなのだろう。
「じゃ、じゃあ行きます。本当にお兄さんとお姉さん?ありがとうでした!」
「うん、早く行ってあげな」
「元気でね、天音ちゃん」
天音ちゃんは何故かモジモジした様子で俺と小野ちゃんに向かってペコリと頭を下げる。
「あ、あと、お兄さんって名前なんて言うんですか?」
しかし、てっきり雲雀さんの元へと走っていくのかと思えば天音ちゃんはモジモジしたまま、そんなことを尋ねてくる。
「? 笹木 独だけど...?」
「じゃあ独兄さん、これ私の気持ちです」
疑問を抱きつつも俺がそう答えると天音ちゃんはそんなことを口にし、俺の頰に柔らかな感触をぶつけてくる。
「じゃあ、また会う時まで!」
そして少し照れくさそうにはにかむと手を振って去っていってしまうのだった。
「あの...笹木...さん?」
すると俺の横では小野ちゃんが笑顔のまま固まっているのだった。
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次回「私もキスしていいですか? いいですよね??」
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