第10話 どうやら、小野ちゃんにつけられてるっぽい...いや分かりやすすぎるんだが


 俺こと笹木 独は今非常に困っていた。というのも、


「これ、完全に小野ちゃんつけて来てるよなぁ」


 先日転校してきたクラスメイトであり、見た目は美少女ロリ、そして何故か俺と結婚をしようと躍起になっている小野 雪ちゃんが今俺のことをつけて来ているからだ。

 本人的には多分隠れているつもりなのだろうが現在も電柱から色々とはみ出ているし、なんなら鼻歌とかも歌ってるのでモロバレなのである。いや、何故尾行中に鼻歌をするんだ。

 と、ついツッコミをしたくさえなってしまうがそんなことを言ってしまえば、逆に堂々と姿を現し横を歩き始めるかもしれないのでなんとか心の中で止める。


 そもそも何故こんなことになっているかと言えば、今朝俺が学校へ行こうとすると小野ちゃんが待ち伏せしているという事態が発生した。そこで俺は下校はこれまでみたいになし崩し的に一緒に帰ることにならないようにするべく、STが終わり小野ちゃんが鞄に用具をしまっているあいだに、素早く教室を出てそのままダッシュで学校も出るといつもとは違う帰路を選んだのだった。

 その甲斐あってか小野ちゃんを振り切る——ことは出来ず、今に至るというわけだ。本当になんでついてこれたんだよ。学校出るまでは割と全力で走ったんだが?


 しかし、更なる問題は小野ちゃんは何故かつけてくるだけでいつものように話しかけてきたりしないのだ。てっきり小野ちゃんの姿が見えた瞬間、「あっ、終わった」と思ったのだがいつまで経ってもつけてくるだけでそれ以上は近づいて来ないので困惑しているのだ。

 正直、俺としてはあまり話したくないのでこのままそっとしておきたいのだが、何故わざわざ隠れてつけて来てるのか不気味なので話しかけて直接聞いて見たくもあるのだ。いや、隠れられてはないんだけど。

 ただ、まぁ家に到着してもつけてくるのなら問題だが家までなら勝手につけて来てる分には害はないので、放置でいいかと俺は結論づける。


「あぅ」

「...」


 そして俺がそんなことを決めた瞬間に、後ろでは小野ちゃんが軽く悲鳴をあげ地面に倒れていた。どうやら俺のことを見るのに必死になって足元を疎かにしたらしい。なんという悲劇だろうか。いや、本当に小野ちゃん尾行向いてないなっ。


「え、えっと、確かここに絆創膏が...あぁっ」


 さらに小野ちゃんはどうやら足を痛めたらしく泣きそうになりながらも絆創膏を取り出すが手から離してまい、それが風に乗って飛ばされてしまう。.....くっそ。最悪だ、無視するのが1番だってのに。


「ううっ」

「おい、大丈夫か?」


 声をかけるしかなくなったろうがっ。


「あ、あれ? 笹木さん? き、奇遇ですね!」

「いや、今更その誤魔化し意味ないしなんならずっと気づいてたからな。とりあえず、そこの公園の蛇口で洗い流すぞ。絆創膏は持ってるがそれはその後だ。歩けるか?肩貸すか?」

「か、肩お願いします」


 そんなこんなで結局俺は今日も小野ちゃんを無視することが出来ないのだった。明日は、明日はねぇからな。



 *



「はぁ、助かりました。あのままだったら私きっと偶然通りかかったゾンビさんにやられてました」

「いや、偶然通りかかるゾンビなんて存在しないんだが」


 公園の蛇口の水で傷口を洗い(小野ちゃんは全力で拒否したが無視して行った)、絆創膏を貼って応急処置を終えひとまずベンチに小野ちゃんを座らせ休ませていると、小野ちゃんは息を吐きながらそんなことを言う。


「でも、それくらい本当に助かりましたっ。本当にお手数かけてすいませんでしたっっっ」


 そして一息つくと、小野ちゃんは改まって俺に向かってそう頭を下げる。...この子、こういうところ本当に礼儀正しいんだよなぁ。いや、ここまで礼儀正しいなら前提としてつけないで欲しいんだけど。


「それは気にしなくていいよ、俺が勝手に助けただけだから。それよりも、なんで俺のことつけてたんだ? そっちの方がよっぽど問題なんだが」

「え、えーっと、最初は普通に声をかけようと思ってたんですよ? で、でも、なんか後ろ歩いてたらそれが面白くなっちゃって...なんか、探偵さんみたいな気分で」

「小学生かっ!」


 恥ずかしそうに頭をかきながらそう打ち明ける小野ちゃん。思ってた数倍しょうもない理由だった。うーん、なんでかこういう所は見た目相応なんだろうな。いや、年齢的に見たらやってること幼すぎるんだけど。


「しょ、小学生じゃないですっ。私はれっきとした立派なレディです!」

「立派なレディは鼻歌をしながら探偵気分で尾行をして、足元を疎かにしてこけて怪我をして泣きそうにならない。よって、ダウトだ小野ちゃん」

「うっ」


 小野ちゃん的には小学生扱いだけは避けたかったみたいだが、流石に俺の言葉に返す言葉がないようでおし黙る。


「とにかく、これからは勝手につけるのはやめてくれ。そして、不注意で怪我をするのもな。...心配になる」

「っ。...す、すいません」


 俺が小野ちゃんにそう注意すると何故か小野ちゃんはポッと顔を赤らめる。


「神に誓ってもうつけるなんて真似はしません。でも、私本当に諦めませんからね? 笹木さんのこと大好きです♡」

「...」


 そして、俺の耳元まで顔を寄せるとそんなことを囁くのだった。どうやら今日の俺の行動は更に小野ちゃんの好意を上げてしまったらしい。...最悪である。


「えーん、えーん」

「「んっ?」」


 俺がそんなことを考えいると女の子の泣き声らしきもの聞こえてきたので、俺と小野ちゃんは揃って顔を見合わせる。


「ひっく、ひっく。迷っちゃったよぅ」


 そして声の方を向くとそこには泣きじゃくる小学生くらいであろう女の子の姿があるのだった。



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 次回「ロリ(見た目)とロリ(ホンモノ)」



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