ある日、幼女を助けたら将来結婚したいと言われたので軽い気持ちでオッケー出したらまさかの転校してきた同級生だった件

タカ 536号機

第1話 道に迷った幼女を助けた


 俺こと笹木ささき どくは人を信じることが出来ない。いや、正確に言うなら出来なくなってしまった。

 だって、そうだろ? 人間というもののはどこまでいっても他人で、いくら長い間一緒に過ごしてきた奴だったとしても、そいつの心の奥底まではどこまでいっても分からないのだから。だから、俺はあまり人と関係をもつことをせず自分1人の時間を楽しんで生きていた。...あの日までは。



 *



「んっ?」


 それはとある日の夕方の6時、俺が食材の補充へと最寄りのスーパーへと向かっていた時のことだった。


「はぁ...」


 通り道の道路で1人の女の子が困ったような顔を浮かべ立っていた。身長や顔から察するに小学生もしくは中学生くらいだろうか? なんにせよ、彼女が幼い少女であることには違いなかった。

 だが、だとして何故そんな子がこんな時間に1人道路で困った表情で立ち止まっているんだ?

 俺の頭に一瞬そんな疑問がよぎる。いや、まぁ最近の子供は割と遅くまで外で遊んでるか。だが、早く買い物を済ませて家へと帰りたい俺は脳内でそう片付けると、特に足を止めることもせずその子の側を通りすぎようとする。


「うー、本当にどうしよう。迷っちゃったよぅ」


 すると通りすぎる瞬間女の子の口から漏れた言葉がたまたま耳に入ってしまい、俺の足が止まる。

 さては、この子迷子か? ...いや、だとして俺がなにを気にする必要がある? 他にもここ通りかかる人はいっぱいいるだろうし、その中には手を貸してくれる優しい人もいるだろう。むしろ、男の俺が下手に声をかければ事案になり兼ねないしトラウマを与えないとも限らない。

 なにより「人と関わらない」これが今の俺の信条なのだから。俺にとっては助けたとしても一ミリもメリットないし、下手すれば通報のリスクすらある。よし、無視しよう。それが俺にとってもこの子にとっても1番だ。

 ようやく考えがまとまり足を動かし始めた俺だったが、


「外も暗くなってきたし怖い人とかと出会ったら嫌だし早く帰りたいのに...」

「うぐっ」


 しかし、足を止めてしまったことで更に聞こえてきた少女の呟きに、一歩歩いたところで再び足を止めてしまう。さっき俺は手を貸してくれる優しい人もいるだろうと考えたが、よくよく考えてみれば逆も十分にあり得るのだ。人との関わりなんてどうでもいいと考える俺だが、流石にそうなった場合は後味が悪い。いや、でも——。


「はぁ、本当フワトロスーパーってどこにあるのんだろう。このままだと私一生帰れないよぅ」


 フワトロスーパー!? どうしていいのか分からず頭を悩ませていた俺の元に少女の口からそんなワードが届き、俺は激しく動揺する。

 何故ならそこは今から丁度俺が行く所だからである。


「...はぁ」

「? あなた誰ですか?」


 そして考えに考えた末、俺は息をつくとゆっくりと振り返って少女の前までいって足を止める。まぁ、俺の中のルールを破ることにはなるがこのまま無視して行ったら後で後悔して寝るときとかも色々考えそうだし。あくまで俺自身の快眠の為に手を貸すとしよう。

 まぁ、ビビられたらその時は大人しく退散するけど。


「いや、なんか凄い困ってる様子だったからもし良かったら手を貸してあげようかなって。この辺りのことならなんでも分かるし」


 一応、子供向けの言葉遣いを意識したがそもそも子供とあまり話したことのない俺には正解なのかは分からない。というか、よくよく考えなくても俺やっぱ不審者では?

 だって通り過ぎたのにわざわざ戻ってきてこんなこと言ってんだよ?


「ほ、本当ですかっ!?」

「う、うん」


 しかし、女の子は俺を不審者として疑うことなく本当に助かったと言わんばかりに歓喜の声を上げると、俺の手を勢いよく握りしめてくる。...子供のコミュ力って恐ろしい。


「えーっと、えーっと、こういう時は...思い出した! まずは自己紹介からでした。わ、私は小野おの ゆきと言いまひゅ。よろしくお願いします」

「俺は...いや、僕は笹木ささき どくって言うんだ。よろしくね」


 俺は慣れない言葉遣いにもがき苦しんでるのだが小野 雪と言うらしい彼女は、それに気づいた様子はなく無邪気な笑顔で握っている手をブンブンと振る。というか、最近の子って凄い礼儀正しいんだな。

 子供らしさはありつつもどこかキチンとしてるし。


「それで、小野ちゃん? はなにで困ってるの?」


 答えは当然知っているのだが、たまたまとはいえ聞き耳的な感じで知ってしまったことだからな。不信感を与えない為にもここはちゃんと小野ちゃん自身の口からもう一度聞かせて貰うとしよう。


「実は私にはお母さんに重大な任務を与えられたのです」

「ほうほう」

「というのが、ここら辺にあるフワトロスーパーへ買い物に行ってきてというものだったんです」

「なるほど、フワトロスーパーね」

「場所は大丈夫かと聞いてくるお母さん。しかし、無謀にも意地を張り大丈夫と答えると家を飛び出した私。さぁ一体、どうなってしまうのか」

「なんかの次回予告?」


 何故かテンションの高い小野ちゃんだが、まぁ子供っぽいと言えば子供っぽいしおかしいことでもないか。


「 まぁ、でも大体事情は分かったよ。フワトロスーパーまで案内してあげればいいんだね?」

「お手を煩わせるようで申し訳ないですけど、良かったらお願いします」

「うん」


 と思ったら急にめちゃくちゃ礼儀正しいんだよな、この子。本当によく分からない。

 とまぁ、そんなこんなで俺は小野 雪ちゃんをフワトロスーパーまで送り届けることになるのだった。



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 次回「幼女に将来、結婚して欲しいと言われました」


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 では!

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