2話 やんちゃななのは

 今回は俺らの症状について、かるーく説明しようと思う。

 解離性同一性障害って言っても千差万別で、患者によって差異は当然ある。

 例えば璃志葉孤槍の中にある内界。脳内って思ってくれていい。俺の場合はリビングって呼んでるんだが、薄暗い楕円形の部屋があるんだ。

 細長い方の一方にモニターがあって、その前に操縦席がある。説明しなくてもわかるだろうけど、ここに座った奴が基本的に表に出る。ようは人格交代だな。このリビングにいる連中はモニターを通じて意識を共有する。つまり、リビングにいないと外で起こった出来事なんかは何もわからない。知らないから当然だよな。


 他にリビングの中央にはコの字型に配置されたソファがあって、リビングを取り囲むようにして各人格たちの部屋がある。

 天井はなくて、俺だけが部屋の中を俯瞰して覗き見る権限を持ってるんだ。他の奴にはできない。すごいだろ?

 だから俺は普段から他の人格が表に出て悪さしないように見張る立場にある。


 これを書いている年末時点で俺の中には基本人格の璃志葉孤槍を含め、全部で十七人もの人格がいる。俺一人で管理するには多すぎる人数だよな。


 そんな大所帯に増える前。当時はまだ十三人だったころから手のかかるのが一人だけいたんだよ。つーか、増えたんだよ。俺の許可なく増えんなよ。まじで。

 表に出る時のルールとか全部メモにしてリビングに貼ってんだけど、守らないのが。


 そいつは、なのはって言う七歳の女の子だ。

 七歳当時の孤槍って感じで、やんちゃもやんちゃ。孤槍になり切ることも出来ないから基本的に表に出ていいのは家に一人でいる時のみってルールを設けたくらい。

 じゃねぇと、親の前とかで出てみ? 大変なことになるのは目に見えてるだろ?

 だから、出さねぇって決めたんだよ。


 もう夜遅いから寝ろって言ってんのに、いつまでもリビング走り回ってるし、隙あれば操縦席に座ろうとするんだよ。

 初めて表に出た時なんて、部屋の中が暗いから何事かと思ったら、めっちゃ部屋の中が散らかってんの。

 最初、孤槍が暴れたのかと思ったら、単に遊んで片付けてなかっただけだったわ。


 リビングの中ですら毎回散らかすんだから、表に出たらもう大惨事だよ。

 それで親に怒られる時にはリビングに戻ってんだから、困ったもんだ。


 な、手のかかる子供って感じだろ?


 そんな俺たちが織り成す物語。

 題して『こやりのワンダーランド』改め『俺と愉快な仲間たち』が幕を開けることになる。


 じゃ、後は任せたぞれん

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