3話 電車の中で

 各々がそれぞれ思うままに書いても面白いんじゃないかと思って、憐に書かせる予定だったんだが、件の友人と話し合った結果、俺視点で書いた方がいいんじゃない? って話になった。

 なので、今後もこんな感じでやることになった。

 行き当たりばったりだけど許してくれ。このエッセイ自体見切り発車なんだし、ご愛敬ってことで。


 さて、今回は孤槍が電車に乗って出かけた時の話だ。

 これはその帰りでの出来事。


 その日は、疲れてたってこともあって、孤槍のやつが端の席に座ってうとうと。まー、よくある光景だな。

 人格交代の方法にはいくつか種類があるんだけど、この眠るっていうのもその一つなんだ。


 つまり、孤槍がうっかり眠ったことで、なのはと交代してしまったんだ。よりにもよってこの不安定な電車の中で、だ。

 実は、この人格交代は静止状態が推奨される。

 なぜかって言うと、瞬間的に切り替わるわけじゃなくて、ちょっとしたラグがあるからなんだ。

 時間にして五秒かそれくらいかな、気絶して意識が途絶える。


 すると、なのはにしてみれば突然知らない場所で起きるわけだよ。

 いつもならベッドで起きるはずなのに、電車の中で揺られてるんだから、そらビックリするわ。

 そしたらバランス崩して倒れるんだよ。電車の席の端だから手すりに頭ぶつけんの、盛大に。


 なのはは七歳の子供だから俺らと違って「痛ってぇ」じゃすまない。

 痛みで強制的に中に引っ込んだ。

 しかも、通常の手順を踏まずに交代するもんだから、同じく強制的に他の人格が表に放り出される。

 これで出たのは孤槍だったんだけど、はずみで今度は後ろに倒れて後頭部強打。

 電車の中で傍から見てた人いれば、何やってんだこの人、だったんだろうけど。


 孤槍からすれば側頭部と後頭部ぶつけて頭いてぇわ、で済まないんだよな。

 リビングでは頭ぶつけて戻ってきた、なのはが大泣き。

 頭痛いばかりか、頭の中で騒ぐなってご立腹だったよ。

 仕方ないから俺は、泣いてるなのはを優しくなだめてやってたよ。仕方なく、な。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る