9話 どういうこと

  新人格が出てくる時ってのは、自分の部屋からリビングに出てくる。

 ――とは限らないんだよ。


 リビングに出て来てくれれば、俺が色々説明する。

 新人格ってのは記憶喪失みたいなもんだから、最初はみんな混乱してるんだ。


 ここはどこ、私は誰? ってな。

 記憶喪失だから多重人格って説明すれば、割とすんなり受け入れてくれる。

 でも、先にリビングに出てくるんじゃなくて、表に出ちまうやつもいる。


 そうなったらお手上げ。

 そういう時は決まってリビングとの接続が切れてて、俺が説明しようにもできない。

 表に出てるやつも状況が全く理解できない。


 それでも年齢相当の知識はあるから、Twitterの使い方はわかる。

 今んとこ全員Xって何? って反応だけどな。

 使い方自体はわかるから、勝手に書き込んで、あとから新しいやつが出たなってなる。


 十一月某日。退院してから十日ほど経ったくらいの頃だ。

 この日は、たまたま友人と通話してた時に切り替わって、先日Twitterに書き込んだ新人格が出たんだ。

 友人と通話で多重人格のことやら、どうやったらリビングに戻れるか。

 そういうのを教えてくれたみたいだ。


 そのおかげで俺が表に出ることができた。

 んで、すぐに新しい子が出て来たよって情報共有してくれたんだ。


「海ちゃんって子なんだけど、リビングにいる?」


 友人の言う通り新顔がいるな。いるんだけど……同じ顔が二人。

 双子かこいつら? 男の子と女の子のペアだ。

 あ、なのはが双子見るの初めてだから、めっちゃ興味津々になってる。


「え、まじで? さっき表出て話してた方どっち? 手振ってみて」


 情報共有しようとした友人の方が、予期せぬ出来事に困惑してる。

 そしたら困ったことに二人とも手振りだしたんだよ。


「ええ……どういうこと……」


 さぁ、俺もわかんねぇ。

 とりあえず、この双子は海ちゃん、海君って呼ぶことになった。

 憐に続いて新しく生まれた十五、十六人目の人格だ。

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