10話 お嫁さん

 孤槍が早熟だったってのもあるんだろうけど、なのはは七歳の割に結構物知りだったりする。

 って言っても、そこは子供なんだよな。

 天然って言うか、お馬鹿って言うか、よくわかんねぇことを言って笑わせてくるんだ。


「なのはねー、T君と結婚する!」

「そっかー、なのはと結婚するのかー」


 大きくなったらパパと結婚するーっていうやつだな。

 友人も手慣れたもんで自然と話を合わせるんだよ。

 俺にはこれができないから、なのはの子守りはついつい友人に任せちまう。


「うん、T君はね、なのはのお嫁さん!」


 なんでだよ。


「僕がなのはのお嫁さんなのかー。じゃあ、なのはは僕の何?」

「娘!」


 わりい。我慢してたけどこれは無理だ。

 堪えられるわけねぇだろ。こんなん笑うわ。


 友人も今絶対ヴィヴィ笑ってるでしょ。

 なんて言うもんだから、めっちゃ頬を膨らませて怒り出した。


「なんで、なんで、びびさん笑ってるの! なのはわかんない!」


 海♂は笑ってたけど、海♀はなのはの発想についていけてないのか、ぽかーんとしてたな。

 友人も面白くて、どんどんなのはから謎理論を引き出していく。

 その度に、俺と海♂が笑う。やめろ、笑い殺す気か。


「浮気はダメだからね」

「お、浮気なんて知ってるのか、なのはは物知りだね」

「なのは賢いもん。浮気は犯罪だよ」

「他に何知ってるの?」

「不倫」

「おお、そんな難しい言葉も知ってるんだ。不倫したらどうなるの?」


「死刑!」


 今までで一番勢いがいいの。

 さすがに友人も爆笑。俺も海♂も腹抱えて笑う。まじでやめろ。


「死刑か。困ったな。苦しいってなるよ」

「大丈夫、優しく死刑にする!」


 優しく死刑って何だ?

 つうか、まだ続けんのか、腹痛てぇよ。


「じゃあ、不倫しない」

「不倫しないの? T君不倫してくれないと、なのは死刑にできない!」


 したいのかよ!

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