10話 破片

 右手に流線が美しいガラス瓶を持っていた。薄く限りなく透き通る。

 これ以上に美しいデザインはないように感じられ、決して割れることのないような気さえした。そんなことを思っていると力の入った右手の中で割れてしまった。バラバラになった瓶の破片に先程まであった流線は消え失せ、鋭角が幾分にも見受けらてた。キラキラと光を乱反射させていて綺麗だ。

 再び、右手に力が入る。握られた拳の隙間からたらたらと赤い血が滴る。不思議と痛みがなく、瓶の破片が持つ鋭利さに心を奪われる。


 

 

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死に損ないの夏 平家蛍 @heikehotaru

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