5話 海
白砂のビーチが見渡す限り続いている。わたしと色褪せたパラソルの他に何もない。パラソルの外は雨だった。雨に打たれた海面に靄がかかっている。靄に小さな影が蠢いていた。あっても、なくても変わりようのない小さな影が、存在を求めるように、段々と近づき大きくなっていた。影が水死体とそれを啄むアホウドリだと気がつく。しばらくすると水死体はビーチに打ち上げられた。アホウドリは啄み続けていた。男女の区別がつかない。ぶくぶくに膨れ上がっている。打ち上げられた拍子に眼窩から蟹が溢れ出した。ぷしゅと水死体は萎んでいった。アホウドリは啄みずらそうにしている。やがて、雨が止み、アホウドリは飛び去った。
「死んだ船乗りの魂はアホウドリに入り、世界中の海を旅する」とかれが言ったことを思い出す。
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