4話 朝曇

 醒めるとタクシーに乗っていた。友人の家に着いたことを運転手が訴える。どんより空が曇り、頭痛がする。タクシーから降りる。

 彼の家の周りからバロメッツは無くなっていた。前に来たのは昔だったような気がする。呼び鈴を鳴らす。返事がない。仕方ないので、わたしは庭を周り、開けっ放しの寝室の窓から家に入った。

 窓のサッシに埃が溜まっていて、手についた。ベッドで手を拭うと赤茶色の液体がベットリとつく。寝室はひんやりとした空気をしている。かれを呼んでみようと思ったが、名前を知らないことに気がつく、かれは誰なのだろう。わたしは腰掛けようとピアノの椅子を引くとピアノに驢馬の死体が乗っていた。目が抉られ、黄ばんだ歯を剥き出している。ピアノに丁度よく収まり、黄ばんだ歯と鍵盤との境が見分けのつかない。

 鼻につく腐敗臭がする気がして、わたしは窓から外に飛び出した。

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