6話 風鈴
羽を広げるとガラスで造られた風鈴が揺れる。風鈴で埋め尽くされた街。水の綾のように風鈴が円状に連鎖して音を鳴らす。
揺れた風鈴が乱反射してキラキラと穏やかな海面に似ている。
最後の海。わたしには渡れる海はもうない。
北の大陸の奥地まで来てしまった。あの懐かしい海にはもう戻れはしない。世界中の海の旅路の終着点。
海で死んだ船乗りの魂が陸を求めるのか、アホウドリは皆、故郷を離れたこの海に落ちる。
わたしにも、時間が残っていない。
アホウドリが落ちた場所はすぐにわかる。黒ずんだ点、1つずつがかつてアホウドリだったのだ。アホウドリを割れた風鈴が犯し、真っ白な羽を真っ赤に染める。真っ赤な羽が飛び散り点を作り、その点は、徐々に、黒ずんでいく。
あの点の内の1つにわたしもなるのだろう。
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