エンディング 夢日記
この日記を見つけたのは、彼女がいなくなって2ヶ月が経った、秋の曇った日だった。
実家に届いた郵便に紛れていた。桔梗があしらわれた封筒と便箋に包まれて、廃品回収のチラシの底で眠っていた。
「記憶は加色されていくから、思い出になる前に終わらせてしまわないといけない」と彼女に話したことがあった。
「ロマンティックね」と笑う姿を思い出す。
僕は出来る限り、美しい色で加色してしまった。何色も重ねて、灰色になっていくのがわかる。思い出を加色せずに保管したのは彼女の方だった。
置いていかないでほしかった。ロマンティックになる必要なんてなかったのだから。
「赤い薔薇の花には、緑の葉があり棘があるから、愛おしいの」彼女は薔薇の花を撫でながら話した。
「根もないと枯れてしまう」僕はシャッターを切る。
「花は可憐なうちに刈り取らないといけないの」借り物のようにぎこちなく言う。
夢日記は葉か棘だったのだろう。この日記が記憶をより一層、愛おしくさせる。
夏に死ねたらよかった。花が灰色に霞んでいくのは耐えられそうにない。
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