9話 海月

 かつて、街があった。風鈴で埋め尽くされた街だった。船乗りとアホウドリの魂はこの街を終着点にして世界中を旅をした。

 どうして故郷でもない、この街を目指したのか、知ることはできない。アホウドリはこの世界からいなくなっしまったのだ。あるとき、この街は臼状の窪みを残して消えてしまった。ある人は、空高く上り雲の国になったと言い、ある人は海に帰ったのだと言った。窪みに長い年月をかけて、雨や雪が降り、溜まった。そして、湖になった。

 いつしか湖には海月が住みついた。今では湖面を覆い尽くすほどの多くの海月が漂う。

 死んだ海月は磯の匂いを漂わせ、海を連想させた。この内地の海にアホウドリは来ない。

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