海の原を船艇が行く。星海の聖女と航帝を乗せて――。

世界の九割以上を占める海。そこで生きていくには、水霊の力が使える巫女が必要不可欠。唯一巫女が生まれる国・聖ルオ国を巡って壮大な陰謀が動き出す。

巫女を諸外国へ派遣することを止め、鎖国を続ける聖ルオ国の田舎町に、かつて神殿に仕えた巫女・ウィスタが暮らしていた。期待されていた水霊の力を行使することができず、顔も見たことのない夫の船も海に沈み、逃げるように町を転々としていたウィスタ。ある日、彼女は転覆した船の残骸が浮かぶ海の底からある男を救い出す。お互いの胸に刻まれた紋章が紡いだ、まさに運命の出逢いだった。


作者様の作品を始めて拝読させていただきました。おそらく、作者様の脳裏には細部まで鮮明に映像が浮かんでいて、それを言語化する力にとても長けているのだと思います。海が裂け、船が沈み、雲間から光差す。体験したことがないような壮大なシーンでも、読者を引きずり込む力を強く感じました。詩的で、だけど的確で。まるで動く絵画のように鮮やかで芸術的な文章に、きっと惹き込まれることでしょう。
身を委ねて海を揺蕩うように、じっくりと読んでいただきたい。波のうねり一つ一つが感じられるような、初めての読書体験ができるかもしれません。

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