のんびり短編集

それぞれの作品の持つ独特の雰囲気や、限られた描写の中に凝縮されたテーマ性は、短編集ならではの魅力を存分に楽しむことができます。

例えば『謎の島』では、物語全体に漂う、静謐でどこか不穏な空気が非常に魅力的です。台風後の島という舞台設定が、自然の力と人間の痕跡が交錯する不思議な空間を作り出しており、その奥深さに引き込まれました。
読後には「島とは何だったのか」という答えのない問いが残り、余韻を楽しむことができました。

一方で『弁当』は人間社会の象徴ともいえる動物園を舞台に、捕らわれの身でありながら日々の生活を淡々と受け入れる彼らの会話が興味深いです。特に、元々野生にいた鷲が「自由」を渇望しな…続きを読む

短いながらもまとまりがあり、男女のみならず動物の視点から描かれる話はかなり新鮮でした。さくさくと読み進められるので、それもまた良い点です！