昔のアニメは今の希望となり得るか? I

 かつて一大コンテンツだったテレビは今や廃れていっているらしい。娯楽として高品質かつ思い出に刻まれる番組で溢れていた時代は何処へ行ってしまったのか、私には分からない。昔はテレビといったら数ある「楽しいもの」の中でも特に楽しいものの一つだった。毎週水曜日のお笑い番組や、金曜日のアニメ。毎日やっているニュースは好きではないけど、見ると安心できた。尤も、今は日々安心出来ないニュースばかりで、インターネットに逃げたくなるばかりだけど。




 小さい頃、私は日曜日の朝に魔法少女アニメを見ていた。その名も「魔女っ子アイドルプリティ☆エレナ」。容姿も学校の成績もごく普通の女の子である綾野佳奈恵(カナエ)がある日、ネズミやリスを思わせる小動物を拾ったことから物語は始まる。これまたお決まりのように、その子は異世界からの使者であり、お礼にカナエにはたった一つだけ魔法を使えるステッキをプレゼントする。それで変身すると十歳から十七歳の美しい少女エレナになった……という話だが、物語はこれで終わらない。魔法少女というのは基本的に派手なコスチュームを纏うものだ。そこに美しい外見が加わってしまえば、後はどうなるか皆さんご存知の通りだ。ライバルでもう一人の魔法少女「シアン」が現れたり、変身しているところを見られてしまったり。それだけでなく、当時の芸能界をリアルかつ丁寧に描き上げたその作風は、小さな女の子だけでなく、大人の男性などにも支持され、社会現象を巻き起こしたのだという。それでも女の子向けだからか、男の子向けよりかは間口が狭かったようだが。




 ライバル魔法少女のシアンはエレナに対して傲慢な態度を隠さなかったものの、芸能界でのウケは悪くなかったという中々に不思議なキャラクターだった。シアンがメインのストーリーも何話か書かれ、最終的には少ないながらも彼女のグッズも作られた。もちろん、お付きの妖精鳥のぬいぐるみも変身コンパクトも作られ、エレナと同じくらい大ヒットを飛ばした。最終的に、二人とも別々の理由で魔法を放棄する道を選んで物語は終わったが、私も含めて当時の女の子達にとって、呪文を唱えてアイドルになれるという設定はきっと希望になった筈だ。「将来はアイドルになりたい」と願う女の子も少なくはなかっただろう。




 長いこと歴史の闇に埋もれていた「プリティ☆エレナ」だが、あることをきっかけに再び語られる時がやってくる。リバイバルブームなどという微笑ましいものではない。インターネット上に、シアンに似たような姿をしたバーチャル動画配信者が現れたのだ。

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