昔のアニメは今の希望となり得るか? Ⅱ

 件のバーチャル配信者を探しに動画サイトにアクセスした私を待ち構えていたのは、確かにシアンと似たような外見をしたバーチャルアイドルだった。しかし完全に似せている訳でもないようで、猫耳や猫の尻尾などのパーツが追加されている。それに、画面の向こうの彼女は、群青色の眼と長い髪、それと今時の変身ヒロインかメイド喫茶のメイドを思わせるような服を着ていた。その服は丈が短く、胸元を強調している。グローブは白いファーが付いた黒。殆ど真っ黒な外見の彼女は、正面を向きながらウインクをして両手をハートマークにしていた。視聴者層の殆どが若い男性である為、媚びているように見えるが、そのパフォーマンスは媚びていないと言い切れる。

「こんクラニャ〜!今日はモリオカートの実況プレイをしていくニャ!」




 彼女の名前はシアンとは違い、クラウディアという女王か姫、貴族の令嬢を思わせるものだった。配信者本人がカッコつけたいのか、それとも単に厨二病なのかは分からない。どちらでもない可能性も勿論ある。一つ言えるのは、何故こんな姿にしたのかということだ。私が知っているシアンはプライドが高く、キツい性格だということ。決して媚を売らず、努力を欠かさない。文鳥の妖精からは「勇気が出る魔法」を授かり、どんなことにも全力を尽くす。そんな気高く美しい、思い出の中の彼女を穢さないで欲しかった。




 コメント欄を見てみると、恐らくは男性からだろうコメントが押し寄せ、更には投げ銭までされている。価格は百円から五百円といった気楽なものから、五千円から一万円といった重いものまでピンキリだった。

「クラちゃん今日もかわいいよ」

「クラちゃんの声を聴くと元気になる」

「ゲームは下手だけどそこも魅力」

「いつかクイズに全問正解出来ますように」

コメント欄には当たり障りのないことばかりが書かれていた。それでいて視聴回数は十万回を超えているというのだから私自身驚いている。だが、恐らくすぐに飽きられるだろう、とも考えていた。ああいう「ドジ」「おバカ」をウリにしたキャラクターは大体持って数年で去っていくからだ。しかし、何故か彼女の動画は三年前に投稿されてから、勢いが落ちる気配がない。




 過去の配信によると、何故彼女がこんな姿になっているのか分かる動画があるらしい。

「化け猫メイドクラウディア・ベルクカッツェのひみつインタビュー」

私は迷わずその動画をクリックしてみた。再生時間は十四分。それくらいならまあ見られるだろう、と思いながら私は動画内容を見守ることにした。

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