昔のアニメは今の希望となり得るか? Ⅲ

 真夜中のワンルームマンション。私はバーチャル動画配信者『クラウディア・ベルクカッツェ』のインタビュー動画を見ようとしていた。投稿された日付を見ると、どうも数ヶ月前らしいことが分かる。再生時間は三十分前後と、この手の動画にしては短い方だ。関連動画も彼女のもので埋め尽くされているが、ビジュアルのせいかどれも見る気にはなれない。




 コメント欄には同じことしか書かれていない。と思いきや、

「何が起きたんだ」

「ヤバかったわコレ」

「宗教かと思った」

というコメントがちらほら見受けられる。それ以外にも、

「クラちゃん、真剣に考えてるんだね!ますます応援したくなっちゃうよ」

「クラちゃん大好き!」

というものもあった。こうなるとどんな内容なのかが気になって仕方がない。明らかに何も考えていない見た目なのに、この動画だけは見たくなってしまう。私はスマートフォンに映る再生ボタンをタップした。




「こんクラにゃ〜ん!今日特別ゲストをお招きして、あたいの秘密を教えちゃうのにゃ〜ん」

「インタビュアーの、リーノでーす!クラちゃんとはいっつも仲良くさせてもらってるよん。それじゃあ早速行きたいんだけど、クラちゃんの名前の由来ってなぁに?」

「そこを突かれたか〜!いい質問だにゃ。苗字は昔のアニメキャラクターから適当に取ったにゃ。名前は

あたい自身のことを指して、戒める為にあるにゃ!いつか螳悟�になる為に!」

「へー、そうなんだ。親とかになんか言われた?」

「そういう訳じゃないんだけどにゃ〜。あたいより出来る奴がいっぱいいるからにゃ〜」

「ビジュアルは何かに影響受けたの?リスナーさんからなんか言われたみたいだけど」

「何と言われようと、あたいはみんなに希望を与えて回る魔法少女になりたくてこうしてるにゃ!そもそもあたいはこの世が菴懊j蟆ス縺上&繧後※、邨カ譛�や雋�縺ョ諢滓ュでいっぱいになるのが嫌で嫌でたまらなかったにゃ!昔の魔法少女が女の子達に夢や希望を与えてくれたように、あたいも自分自身の蟶梧悍縺ョ蠖「を見つけたいにゃ!だからこうなってるにゃ。コレはみんなが望んだ蟶梧悍縺ョ蠖「。沢山の繝溘�繝�の中から選んだ特別なモノなんだにゃ!確かに何かには似てるかもしれない。けれど、誰かが望めば蠖「縺ェ縺阪b縺ョは形に出来る!誰もが幸せになる日が来るのを、あたいは祈ってるにゃ!」

「意外と考えてるんだね、クラちゃんは」

「そうでもないにゃ。今のあたいに出来ることってこれくらいしかないから……」

「でも、クラちゃんは凄いよ。私はいつもクラちゃんがそんなこと思って配信してるなんて分からなかったし」




 私は動画の一時停止ボタンを押し、バスルームへ向かった。何故だろう、おかしな余韻が残っている。今日は眠れないかもしれない。




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