雨の日〜買い出し編〜

 雨の日というのは苦手だ。そもそも傘を差さなければならないし、自転車が使えないので重いものは手で持たなければならない。服が濡れるというのもあり、雨の日は苦手だった。古い家に住んでいる人なら雨漏りもするだろう。幸い、私の家は新築のマンションだからその心配はない。しかし、私が住んでいるところから五分以内のところに立派なスーパーはなく、代わりに小さなコンビニだけがあった。




 コンビニの品揃えはいいとはいえない。反対側にある近くのドラッグストアにさえ劣る。僅かに生野菜や果物を取り扱っている点と、少ないながらも書籍などを取り扱っている点は評価出来るものの、それ以外はあまりにも劣っている。だから、普段から私はこのコンビニには行かない。




 その日は朝から雨が降っていて、時計をぼんやり見てみると夕方の四時になっていた。晴れていれば陽が沈み、街は橙色に染まっている筈だが、変わらず窓の向こうから見えるのは灰色の空だけだった。今日は休日で仕事がないとはいえ、とてもダルくて起きる気にはなれない。窓ガラスには絶えず雨粒が降り注ぎ、大きな雨音まで聞こえている。土砂降りであることは容易に理解できた。




 おやつを食べようと思い、戸棚や冷蔵庫を漁るとあることに気がついた。普段から備蓄している筈のお茶のペットボトルが一本もないのだ。ティーバッグは淹れるのが面倒臭くて買っていないし、そもそも立派なティーポットも家の中にはない。外はきっと寒いだろうことを考えると、布団から出るのは嫌だった。




 案の定布団の外は寒い。スマホの天気アプリを見る限りでは真冬並み、とまではいかないもののそれでも寒い。こたつがあったら入りたくなるし、寒がりな私には地獄としか言いようがない寒さだった。




 結局私は足りないお茶を買う為に外へ出ることになった。コンビニではない、反対側のドラッグストアだ。歩いて五分。そこならコンビニよりは遠いが、食べ物や飲み物に限ればまだ品揃えがいいから仕方ない。更には薬や石鹸、生理用品などが沢山あるので、近くに住んでいる人は便利に利用しているに違いない。私もその一人だが、そういった目的で使うことはあまりなかった。




 買い物を済ませた後、店の外に出るが、二リットルのペットボトルを両手に二本は流石にキツい。私は二階に住んでいるので、階段込みだと更にキツい。車があればまだ楽だったのかもしれないが、あいにく私は車を持ってはいない。免許は持っているけれど。




 鍵を開け、中に入る。台所の冷蔵庫の近くまで三本のペットボトルを持って行った後、私は一本を居間に持っていった。飾り気のないガラスのコップの中にお茶を注いで、テレビを点ける。何気ない休日だが、テレビの向こうは今日も賑やかだった。



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