第5話 住民はどこに消えたのか?




「ああああアアアアアア……嗚呼……そう言えば何か言っていた気がする。ええっと……ええっと……嗚呼……思い出した。そうそう……とほかみえみため……嗚呼……と ほ か み え み た め」


 澪がおまじないをした。すると……まさしく “ヘンゼルとグレーテルのお菓子の家”食べ物だけでつくられた“夢の国”が現れて来た。


 空にはソーダ-水がたっぷりとこぼれて、雲はマシュマロと生クリーム。フランスパンの丘にグミの花がところ狭しと咲き乱れている。


 そして……緑の森は抹茶のプチシュ—クリ-ムに、抹茶小枝(小枝の形をした抹茶味のチョコレート)。木はキャンディで出来たカラフルでたわわな、それはそれは美味しそうな木の実を実らせたキャンディ木立が立ち並び、森が一層華やかさを演出している。

 

 そこにクッキーとチョコレートの汽車が走っている。また、クッキーで出来たクマさんや、うさぎさん、犬ちゃんに、猫ちゃんもいる。


 すると、今度はお菓子のお家が見えて来た。家まで続く歩道は瓦煎餅で出来ている。両脇にはマシュマロの切り株が延々と並んでいる。


「アッ!お家が目の前だ」

 クッキ—の煙突に綿菓子の煙、そして…チョコレートの屋根、壁はクッキー窓はチョコレート。いちごとカラフルな飴の庭・・・。 何という夢の楽園なのだろうか!

  

 だが、何とも心躍るお菓子の世界を堪能していた2人だったが、ふっと不安の二文字が頭をよぎった。それは……これだけの楽園にどういう訳か、猫の子一匹いないという事だ。


 確かに……クッキーで出来たクマさんや、うさぎさん、犬ちゃんに、猫ちゃんもいるのだが、これでは絵に描いた餅でしかない。

 

 これは一体どういう事なのだろうか?

 

 だがその時だ。不思議なことに本物の動くアリさんがちらほら姿を現して来た。そこで二人は不思議に思い訪ねてみた。


「アリさん、アリさん、猫の子一匹いないのだけれども……どこに消えたの?」


 すると……一匹のアリが意味有り気な表情でニンマリ笑ったが、全くといって言葉を発する様子が無い。


 これは……これは……一体どういう事なのか?



   ◇◇


 二人アンディ王子と澪がこの「お菓子の世界」をくまなく歩き、アンディ王子の願いである「お菓子の世界」の神様を探し回っていると、急にアリの行列に出くわした。


「一体どこまで続いているのだろう」


「本当ね?アリの行列を辿ってみましょう」

 どこまでも続くアリの行列に付いて行くと土に穴が空いている。


 土に穴を掘り住んでいるらしい。だが二人はアリの棲み処といっても、妙に穴が大きい事に疑念を感じずにはいられない。


 それはマンホ-ルの穴ぐらいの大きさだった。

 これは一体どういう事?


 不思議に思った二人はそのアリの棲み処かも知れないほら穴に、恐る恐る侵入して見た。


 アリという虫はどうも…部屋をたくさん作って生活をしているらしいが、その時だ。一匹のアリが列を離れ急ぎ足で右にそれて、ある一室に消えた。


 しばらくすると、この土の穴の中に凄い地響きが鳴り響いた。 


 ”ドシン” ”ドシン” ”ドシン”


 何と……そこに現れたのは巨大な……それこそ熊の二倍はありそうな、巨大なアリが二人の目の前に現れた。


 それは何と……この「お菓子の世界」の女王アリだった。


 それでは……何故女王アリはこんなに巨大化してしまったのか?そう思った二人だったが、そんな事を初対面で女王アリに聞ける筈もないので、とりあえず住民はどこに行ったのか訪ねてみた。


「あの~?アリさんこの「お菓子の世界」には子供が沢山いると聞いておりましたが、一体どこに消えたのですか?」


「オッホッホッホ~!わたくしがそのような事、分かる訳ございませんことよ」


「嗚呼……それはそうですよね?土の中で生活していらっしゃるのですから……アッ!それから……チョットお聞きしたい事が有るのですが、この世界の神様はどちらにおいでですか?」


「嗚呼……それならば、わたくしの部下働きアリにお供をさせます。ちょっとお待ちを……爺やクロオオを呼んでおくれ」


「ハッ!ただ今呼んでまいります」

 

 暫く待っているとクロオオというアリが現れた。


「女王様何か御用でしょうか?」


「ああ……このお二人を神様のところにお連れしておくれ!」


「ハッ!かしこまりました」


 こうして……アンディ王子と澪はアリのクロオオに先導されて、神様の住む住み家に向かった。


 神様の住み家は綿菓子で出来た天空の雲の上にあるのだが、クッキーで出来たピカピカ光る雲の階段を登り、行かなければ辿り着かない。それでも…延々と上る事二時間やっとの事到着できた。



 「お菓子の世界」の神様の住み家は、この世界を見守り照らし続ける為に天空に浮いていた。そして…どういう訳か、神様の住み家は丸い太陽の形に似たどら焼きと、大福と、ゆで卵で出来ていた。


 だが、「お菓子の世界」の神様の想いとは裏腹に、実は恐ろしい出来事がじわりじわりと広がっていた。


 それは……想像を遥かに超え巨大化の一途を辿っていた。


 一体この世界の住民はどこに消えたのか?



 ※アリ科の多くは、女王アリと雄が交尾して働きアリを産むのだが、働きアリは全て雌で、産卵を担当するのは女王アリだけだ。


 働きアリの仕事は幼虫を育てたり、餌を捕ったりする仕事だ。女王が分泌する女王フェロモンによって、働きアリはメスが女王にならないように抑えられ、体が産卵できない状態に変わる。


 だが、それでも産卵してしまう働きアリもいるので、こうしたおきて破りの裏切り者を見つけると、集団で襲いかかって産卵を妨害したり、卵を奪って食べ破壊したりしてしまうという。

 その理由は働きアリが産卵してしまうと、生まれた幼虫を育てることに労力を奪われ、餌を捕る力が低下する。また女王アリの幼虫を育てるなどが出来ない為、不利益な存在になるからだ。


 


 有難うございます!この度は本作を御目に留めて下さり嬉しい限りでございます。もし少しでも気に入って頂けたら作品♡★フォローをお願いします!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る