第2話 美しい男



 

 空には真っ赤な太陽とは違う惑星が目に飛び込んで来た。そして…どこまでも……美しいオレンジが広がっている。


 暫くすると空が一瞬で暗闇におおわれ、恐ろしいまでの静寂が訪れたがその時だ。大きな青い光線がピカリと光り輝きどこまでも広がり、やがて西の空には球体のブルーに紺色のしま模様の惑星が薄っすら顔を出してきた。


 そして赤い花火のような星や星屑が南の空に散らばった。

 

「ワァ~何と……何と……美しい世界。ここは……ここは……一体どこなの……?」  

 澪は今まで見たこともない世界に辿り着いてしまった。


 天を仰げばカラフルで頑丈なシャボン玉のようなものの中に、動物や子供たちがプカプカ浮きながら漫勉の笑みで手を振ってくれた。余りにも現実世界とのギャップに恐怖を感じた澪は大声で話し掛けて見た。


「ねえねえ……ここは……ここは……どこなの?」

 すると一人の坊やが答えてくれた。


「ここはね。夢の星といって四つの世界で成り立っているんだよ。そして…今いる世界が最初の世界で『 ソープ バブル』という『シャボン玉世界』なんだ。もし以前の星に戻りたいのであれば四つの世界を全部通らなくては元の星には戻れないよ」


「私は過去の記憶が思い出せないのよ……だから……帰りたいとも思わないのよ。だから……ここで暮らす事は出来るのかしら?」


「『ソープ バブル』と言う世界だけれど、ここでは十二歳以上は暮らせないと思うよ。だって……この世界で今まで大人見た事有る?無いでしょう。早くしないと手遅れになるよ。この世界では十二歳以下の子供にとっては夢の世界かも知れないけれど、十二歳以上の人間は二十四時間、つまり一日で第二の夢の世界に移れなかったものは、シャボン玉のように弾けてなくなるんだ。あのさ……その絶壁から谷底に下ったところに、この世界の魔女がいるから、そこでこの世界で生きて行けるか聞いてごらんよ」


「一体どういう事よ?この世界の王様っていないの?」


「王様一族がいたのだけれど、シャボン玉の如く弾けて消えたと言う噂だよ。どうも魔女の仕業らしいのだけれど?」


「それでも……この世界の王子はいるでしょう?」


「嗚呼……王子は十二歳以下だからいるにはいるが、魔女の手でどこかに幽閉されているらしい。それでも王子ももう直ぐ十二歳、やはりシャボン玉のように泡と消える可能性十分にはある」


「魔女は最初からいたの?」


「どうも……最初はこの世界は年齢関係なく老若男女が住む素晴らしい世界だったんだ。そして…魔女は最初は美しいエバという娘さんだったのだが、エバはこの世界の王子に求婚され、もうすぐ婚礼の日を迎えようとしていたが、運の悪い事に『ソープ バブル世界』に未曾有の大災害津波が巻き起こったんだ。そこで王様がこの世界に一人の海の神様・ポセイドーンを招集された。だけど、この海と地震を司る神様ポセイドーンは偽物だったんだ。実は…悪魔サタンだったのだ。サタンは、かつては神に仕える御使いであったが、何かの事情でサタンとなり……やがて地獄の長となってしまった悪魔だった。美しいエバはこの地獄の長サタンに言葉巧みに騙されたのだ。『この国を元の美しい海と緑溢れる世界に私が再生してあげましょう。一度私の棲み処でこの荒れ果てた世界の再生についてじっくりと話がしたい。エバ姫あなたしかこの世界を救うことが出来ないのです。あなたには他の者にはない功徳が授かっておる。だから……私の神聖な場所に余計な邪気が取りつかない為にも、決して王子とは一緒に来てはなりません』そんな事を言われたエバ姫は何とかこの世界を、元の美しい自然あふれる世界にしたくて、ひとりで出向いたのです。そして…エバがこの棲み処に入った途端、偽物ポセイドーンで恐ろしいサタンに強姦されてしまったのです。それもこの儀式によって未来永劫この世界は大災害やその他の不幸は起こらないと諭して行為に及んだらしい。それでも…エバ姫は散々抵抗したが、抵抗虚しくサタンとの性的交わりを持ってしまった。あれだけ善良でこの世界の事を最優先して考える優しいエバ姫は、それによって全く真逆の恐ろしいまでの魔力や人を害する力を授かってしまったのです」


 ※ポセイドーン:ギリシア神話の海と地震を司る神で最高神ゼウスに次ぐ圧倒的な強さを誇る。海洋の全てを支配し、全大陸がポセイドーンの力によって支えられていると言われて地震をもコントロール出来るとされる。地下水の支配者でもあり、泉の守護神でもある。


「でも……今は恐ろしい魔女かも知れないけれど元々はとっても優しい、女王様に成るべくしてこの世に生を受けたような、そんな素晴らしい人だったのだから、ひょっとしたら見た目は魔女かも知れないけれど……心根は、ハートは、とってもきれいな魔女かも知れないわね?」


「恐ろしい魔女と言うのも噂だからね。その魔女を見た人は滅多にいないから分からないんだ?だから……行ってごらんよ?嗚呼……アブナ😢もう時間が残って無いから……」

 


「恐ろしいヤリのようなトゲトゲした断崖絶壁から深い谷底を下って行ったところにあるのね?それでも…私……ギラリと鋭い目付きの恐ろしい魔女を見たわよ。杖を付いた魔女だったけれど……そして…地響きのような『グワッ!グワ————ッハッハッハ———ッ!』空恐ろしい笑い声が鳴り響いていたわよ」


「お姉ちゃん変だね。この世界に迷い込んだばかりなのに、滅多とお目に掛かれない魔女の正体を、断片的にでも見れたなんて……?僕らでは考えられない。何か普通ではない力が備わっているのかも知れないね?」  

      

「嗚呼……アアアアアア……ああ……時間切れでシャボン玉のように弾けて無くならない内に、魔女さんに会いに行くね。どうもありがとう。ところで坊や……やけにしっかりしているけど……お名前聞かせてくれない?」 


「ああ良いよ。僕の名前はトムだよ」


「ありがとう。私の名前はミオよ」



    ◇◇


 澪は全く気付いていなかったが、澪は実は…この世界に転生してしまった途端、赤いシャボン玉の中にいたのだった。



 そしてこのシャボン玉は、口に出して自分の気持ちを伝えると、どこにでも行ってくれる不思議なシャボン玉だった。


(この事もトム君が丁寧に教えてくれたのよね。本当にしっかりした良い子だったわ)

 そんな事を考えながらもシャボン玉に気持ちを伝えた。


「私を恐ろしいヤリのようなトゲトゲした断崖絶壁から、深い谷底に下った所に棲む魔女さんの所に連れていってチョウダイ!」


"フゥ―――――――ッ!“ ”フゥ―――――――ッ!“ ”フゥ―――――――"ッ!


するとふわふわ浮き上がり超高速で断崖絶壁から谷底に入っていった。


 その時だ。雲間から谷底に向かって、恐ろしいまでの稲光を放ちながら”ピカピカ” ”ゴロゴロ”と雷が峡谷の縁に落ちて行くが、それとは裏腹に何とも幻想的な四十数条の滝が糸のように流れ落ちる岩肌は、まさに自然の芸術が織りなす絶景だ。


(案外思っていたイメ-ジとは違っていたわ)


 そして…谷底には多量の青々とした水、それも神秘の緑をたたえる水が流れ出し、早瀬(川の流れの浅くて速いところ)となり、深淵(川などの深い所)を見せる見事な峡谷景観が現れて来た。


 更には、切り立った岩肌が美しい両岸に、神秘のチョックストーン(岩壁に挟まった石のこと) が、濡れて光る岩肌と、かかる水しぶきが一瞬霧のように、かすみのように映るが、微細な気泡が飛び散り、それは何とも幻想的で神秘の峡谷景観が延々と広がっている。


 するとその時、一瞬だがこの世の者とは思えない美しい男がス―――ッ!と切り立った断崖に現れた。


 だが、どういうことだ?一瞬で消えてしまった。


 有難うございます!この度は本作を御目に留めて下さり嬉しい限りでございます。もし少しでも気に入って頂けたら作品♡★フォローをお願いします!















 

 










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