第10話 クリスタルの世界
「必ずまた戻って来ます」
そう言って二人は「ピンクの世界」を後にして「クリスタル世界」に足を進めている。
◇◇
「オイ!二人のどっちが噓を付いていると思う?」
「さ~ね?」
その時だ。一瞬ピンクの海に二人の姿が映ったのだが、それは……さっきまでの醜い姿ではなく、その姿は元の美しい海の女神と何とも美しい海の王子様風の男が、それも到底醜い争いの渦中にある二人ではなく、愛を誓いあう恋人のように一瞬だが、美しいピンクの海に映った。
これは一体どういう事なのか?
だが、いずれまた戻って来ると言ったので、その時全てが判明するだろうとアンディ王子と澪の二人は足早にこの世界から脱出した。
そして次の第四世界「クリスタル世界」へ……。
◇◇
「クリスタルの世界」は一面キラキラ輝く、まさしく宝石箱をひっくり返したような光り輝く眩しく美しい世界だった。
そして…アンディ王子が言っていた通りの現状を、まざまざと目の当たりにした澪だった。
「水晶六角柱状のきれいな結晶を使った家も多く点在していて、病院なども水晶六角柱状の結晶で出来ています。景観が良いクリスタルで出来たビルや家も多いのですが、景観重視で建築された建物は直ぐに壊れてしまいます。このように至る所クリスタルで出来ているので、犯罪も多いのです。それは……光の屈折で一人の人間が沢山出来てしまう為、ちょっと気に食わないとすぐに殺人事件が起こるのです。目の錯覚で屈折によって一人の人が何十人も出来てしまうので、一人くらい殺しても大丈夫と勘違いして、気に食わない人間を簡単に殺してしまうのです。更にはクリスタルで出来た建物は景観はそれこそ宝石のように美しいですが、台風や地震で直ぐに建物は倒壊して多くの被害者が跡を絶たないのです。でも……クリスタルの世界の住人は,この✨キラキラ輝くクリスタル建造物が自慢で、毎年多くの被害者を出しているにも拘らず、悔い改めて木材や鉄筋の建造物にしようという案が出ても、全く聞く耳を持たないのです」
「そうだわね。ガラス張りで出来ていたり、水晶六角柱状だったり、鏡だったりして至る所に私が移っているわ。これなら目の錯覚で住民が何倍も多くいると錯覚してしまうわね」
◇◇
二人はクリスタルで出来た煌びやかな宮殿の前にやって来た。
それは巨大なクリスタルの城だった。するとその時、夜空に星屑が無数に散らばってキラキラ✨ピカピカ✨まるで星のカ-ニバル。
妖精たちの仕業なのだろうか、魔法のステッキで願いを込めて「エイ!」
お城全体が氷のクリスタルで凍ってしまったような、何とも幻想的でファンタジックな夢のお城。
光りの屈折によってダイヤモンドほど美しく輝く宝石はない。
クリスタル城は、宝石の王様ダイヤモンドにも引けを取らない、煌びやかで美しい宮殿。それは……まるで氷河が太陽光を浴びて一面に光るような華やかな光り。まさしくダイヤモンド城。
そして…いつの間にか、この美しい…ダイアモンドの輝きを放つお城の前に着いたアンディ王子と澪。
するとそこに如何にもかっぷくの良い、白髭を蓄え眩しいばかりにキラキラ輝く
王冠を被った王様が現れた。
「嗚呼……帰って来たか王子よ!」
「ハイ!父上様」
「ところで……そのお嬢さんは誰だ?女の子など滅多と連れて来ぬ王子にしては珍しい?」
「嗚呼……そうなのです。この澪と言う女の子は第一の世界に紛れ込んでいた娘で、この四つの世界の住民ではないのです」
「ふむふむ。という事は……この四つの世界に紛れ込んめたという事は、何か?特殊な能力が備わっているという事だな?これは……ひょっとしたらこの四つの世界に起こっている不吉な出来事を、全て救ってくれる救世主になるかも知れぬ?ううん?だが……待て!それこそ…その真逆で、恐ろしい事の前触れかも知れぬ?」
「んまぁ?そう言う事かもしれませんが、でも……今まで道案内役を買って出て一緒に旅を続けて来ましたが、四つの世界の悪事を暴き出す為の力にはなりましたが、この子のせいで何かしら?恐ろしい目に遭った事など一度もありませんでした。だから僕はこの女の子澪と、四つの世界を救済したいのです。当然今起こっているこの『クリスタルの世界』での災害や殺人事件の数々も、澪と一緒に取り組んでみたいと思います」
「だが、その前にそのお嬢さんをチョットだけ試してみたい。それはじゃ、どういう事かと言うと大切な次期王と一緒に、お供が出来るだけの器が備わっているかという事だ。我が大切な王子に危害を加えるような人物は、ただちにこの世界から抹殺せねばならぬ!」
「分かりました。私はその試練を乗り越えて見せます!」
澪の決意と勇姿を目の当たりに、一体どのような試練が待ち構えているのか?
◇◇
王様に命ぜられるがまま付いて行った澪だったが、ある一室に入るように促された。その部屋は時空を超える空間で、過去への旅 をする空間だった。
何故、王様はこんな実験をしたのかと言うと、この四つの世界は過去のどこかの時点で、大きな過ちを犯していたという見解に至ったのだった。
それで……澪にはまず、この『クリスタルの世界』の過去を旅してもらい、どの時代に大きな過ちが有ったのか調べさせようと言うものだった。
もし時空を超え過去の過ちを見つけ出すことが出来たなら、可愛い息子との救済の旅を許可しようと考えている。
一方の澪は、この不思議な空間で突如時空を超える旅をする事となったが、もし澪に特殊な能力が備わっているのならば過去に辿り着ける筈だが……。
果たして澪は時空を超えることが出来るのか?
王様の合図で召使によって澪はこの不思議な空間に閉じ込められたが、この空間はどこまでも……どこまでも……延々と道が続いていた。だが不思議な事に……その両脇は一面霧が掛かったように、何も見えない状態が延々と続いていた。
(もし私に特殊な能力が備わっていれば時空を超えることが出来る)そう考えて澪は只々延々とこの長い道を歩いた。
すると突然目の前に不思議な光景が浮かび上がった。それはこの「クリスタル世界」の過去だった。
実は…過去のある時点で、この世界に大きな問題が起こっていた。実は…過去を辿って行くと第七代王が大の占い好きだったことが判明した。
何故占いに凝ってしまったのかと言うと、この七代王には世継ぎが中々誕生しなかった。
そこで困り果てた重鎮が、ある占い師をこの王宮に招集した。そして南西方向に良き縁ありと説いた。そこで南西方向の娘を側室として王様に差し出した。するとどういうことか、直ぐお子が誕生した。
こうして…王様のお気に入りとなったその占い師は、自分が私腹を肥やしたいばかりに「この国を水晶、宝石、クリスタルで埋め尽くした世界にしなさい」そう説いた。
すると…この世界には連日連夜観光客が押し寄せ人気の世界となった。以前は花が咲き誇る「花の世界」だったが、気候的に寒冷地だった為、花の見頃が少なかったので、「花の世界」を止めて、一面クリスタルの世界に変え、名前も「クリスタル世界」に変更した。
更には、その占い師の予言で山を掘った所、宝石の原石鉱物が見つかった。こうして占い師に心酔してしまった王様。
宝石の他に金もザクザク出る鉱山。やがて住民たちは生活が潤い、徐々に労働意欲が欠落して金鉱石、鉱石、宝石、水晶、クリスタルこそ全てとなってしまった。
💎岩石、鉱物、鉱石、宝石、天然石の違い。
岩石は鉱物の集まり
鉱物は無機質の結晶化した天然の物質
鉱石は鉱物の中で資源(ダイヤモンド等)とされるもののこと
宝石は鉱物・鉱石の中で美しく希少でジュエリーとして耐えうるもの
天然石は宝石ほどではないが美しさも備えて価値があるとされる石
岩石→鉱物→鉱石→宝石
だが、そんな資源がいつまでもある筈がない。その鉱石も底を付いて来た。
これは大変!豊かな生活が当たり前になってしまった住民にとって、楽をして贅沢をする生活が当たり前になっていたので、働く意欲などとうに失われていた。
こうして…生活に陰りが見え始めた一部の勤労意欲の失せた愚かな住民によって、殺人事件が多発している。こんな事情から…現在の体たらくな世界になってしまった事が判明した。
過去を旅して来た澪は、早速過去の過ちを王様に話した。
「王様私は過去を旅することが出来ました。この世界の第七代王アーノルド王が大の占い好きで、それが祟ってこの様な体たらくな世界になったのです。むやみやたらに占いを信じてはなりませぬ!」
とうとう アーサー王の信頼を勝ち得た澪だった。
◇◇
「澪さん王子を頼んだぞ。この四つの世界の為に尽力してくれたまえ!」
するとそこに美しいアリス女王様が、宝石の散りばめられた豪華なドレスを身にまとい、髪には女王様の称号を持つ宝石ジュエラーをかぶり現れた。
「澪さんアンディ王子を宜しくお願い致します」
こうして…アンディ王子と澪はまたしても、元いた「ソープ バブル世界」に戻った。
これからアンディ王子と澪には幾多の試練が待ち構えている。
果たして四つの世界を救済することが出来るのか?
そしてアンディ王子と澪二人の恋の行方は……?
また…異世界転生してしまった澪は、現世は養護施設「あけぼの学園」で育った日本屈指のアイドルグループ「ムーン✰シスターズ」の一員だったが、突如夢の中に出てくる澪と瓜二つの、リンドーレティス王国のマーガレット姫とは一体何者なのか?
それとも…リンドーレティス王国のマーガレット姫は只の幻覚なのか?
🎈シャボン玉🍪お菓子🛑ピンク💎クリスタル4つの世界の救済に向かうアンディ王子と澪の二人。
有難うございます!この度は本作を御目に留めて下さり嬉しい限りでございます。もし少しでも気に入って頂けたら作品♡★フォローをお願いします!
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