第13話 「ピンクの世界」の救済



「嗚呼……なんて事よ。恐ろしい爆音と共に女王アリは粉々になり肉片だけが散らばり、女王アリは跡形もなく消えてしまったわ」


「まぁ可哀想だけど仕方が無いよ。放っておけば住民達に危害が及び大変な事になるからね」


「本当にそうよね!それでは第三の世界『ピンクの世界』に行きましょう。エイ!」手をかざして気を集中させて「ピンクの世界」に辿り着いた二人だった。



     ◇◇


「ワァ~~~!何回見ても美しい世界ね。なぁに、この世界は……海と空しかない世界。空も海もピンク一色の世界で本当に綺麗!」


「俺さぁ幼い頃に第三世界の女神の事を、クリスタル城の爺やから聞いた事が有ったんだ。この世の者とは思えぬ美しい海の女神は、キラキラと輝く海洋の白い泡から生まれ出た女神だと聞いたことがある」


「へぇ?やっぱりね。尋常じゃない美しさだものね。全てがピンクずくしの世界に、白く泡立つ ピンクの波間に突然、美しい海の女神がまるで美しい花がひらいたように、淡い桃色の乙女色ドレスに真珠をあしらったレ-スのドレスを身にまとい、海の花の象徴ハマナスをかたどったルビーの髪飾りを髪に飾って現れた時には、余りの美しさに卒倒しそうだったわ」


「それこそ全宇宙の生物が心を奪われ恋に堕ちる。この世の者とは思えない妖艶で美しく、あまりのエロスに万物の雄達は身も心も奪われて、この『ピンクの世界』に一度足を踏み入れたら最後、誰一人として帰って来たものはいないそうなんだ!」


「へぇ?『誰一人として帰って来たものはいない』って一体それって何を意味しているのかしらね?おかしいわね?少し様子を伺って見るのも有りかもね。でも……怪しまれたらおしまい。チョット気を集中して過去を透視してみるわね『エ——イッ!』嗚呼……見えて来た……見えて来た」




     ◇◇

 それでは……過去がどのようなものだったか、透視で見て行こう。


「嗚呼……嗚呼……見えて来たわ」


 今日も早速女神シェリ-は、四つの世界のどこかの海に辿り着き、選りすぐりの男に声を掛けている。


 上半身は美しく豊満な肉体を持ち男を魅了して離さない女神なのだが、海から沖に上がれば下半身は人魚ではなく飛竜で、四肢とは別に翼を持っている恐ろしいモンスターだった。高知能で性格は凶暴で闘争心が非常に高く、その狂暴な口からは炎、猛毒などを吐き出し攻撃する恐ろしい悪魔だった。また人間の魔法とは異なる独自の魔法を使って襲ってくる、何とも恐ろしい悪魔だった。


 ある時は空を飛び男を物色して、ある時は人魚のように海を自由自在に行き来して男を物色している。

 そして…目ぼしい男を見つけると人間に変身して、美しい女神となり男をその魅力で誘惑するのだった。


 こうして…港町を闊歩して選りすぐりの男を漁るのだが、標的が見つかると、これだけの美貌だ。誰しも目が釘付けになるのだが、その標的の男が近づいて来るとフェロモンを出して誘惑して魅了する。男達は夢遊病者の様にその魅力の虜となり、跡をついていくのだった。


 そして…またある時は標的の男が近づいて来たところで、よろよろと倒れて見せる。


「嗚呼……どうなさいましたか?」


「ええ少し……気分が優れませんのよ」


「じゃ~僕が馬車でお家までお送り致します」


「嗚呼……ありがとうございます」


 こうして…馬車に乗り込み馬車は走り出すのだが、背後から首筋に噛みつき血を吸い気絶させて「ピンクの世界」に連れ帰り、ある部屋に幽閉する。


 

 そして…ある時は標的の前で倒れて見せる事も有るが、またある時はその港町のカフェの店員だったり、またある時は上流階級のお嬢様を気取ったりして巧みに近付き、この美貌とフェロモンと所作の美しさと魅力でイチコロにして男達を誘惑していた。


 それでは……その男達を誘惑する目的は一体何なのか?そして…その後選りすぐりの男たちはどうなってしまったのか?

 

 実は…この女神シェリ-の好物は何と……子供や若い男の生き血を吸う事だった。それこそ……血が無くては生きて行けない女神だった。


 

     ◇◇



 それでは……男達はどうなってしまったのか?

 血を吸われ死んだのかと思いきや、そうでは無い。血が再生され易いレバ—、あさり、サンマ、小松菜など、鉄分の多い食品を摂取して生き延びていた。


 だが、この女神の恐ろしい所は、選りすぐりの男たちの血を吸って生き永らえているのだが、この女神のもっとも恐ろしいところは「ピンクの世界」の女性と性交渉をして子供が出来たと分ると、何と恐ろしい事に嫉妬に狂い、情夫である男と女の間に誕生した子供だけを喰らうどころか、何と……情夫と女も一瞬にして狂暴な飛竜と化して喰らうのだった。


      

     ◇◇


「見えて来たわ。あの女神は恐ろしい女神。そして巨大な化け物『モササアンキロサウルス怪獣』に変身させられた男ジャクソンは、何と……唯一の夫だったのね。それも女神シェリ-が最も愛した男だったが、愛人の存在を知り嫉妬に狂いあんな醜い姿に変身させて、浮気が二度と出来ないようにしたって訳よ。そして……更には夫の愛人と、愛人との間に出来た子供二人を喰い殺したのよ。本当に恐ろしい女神で、多種多様の武器を使い変身して襲ってくるのよ。本来の姿は上半身が女神で下半身が人魚ではなく飛竜で、四肢とは別に翼を持っている恐ろしいモンスターなのよ。こんな嫉妬深く最強の女神だからジャクソンも下手に逆らえなくて、従順な夫を装っているって訳」


「それでも…これでは四つの世界の選りすぐりの男達が、次から次へと犠牲者となり連れさられて、性奴隷となりその挙句には殺されている現場化、何とかしないといけないね。被害をこれ以上出さない為にも何とかしないと……」


     ◇◇


「そう言えばジャクソンと最後に一瞬だけ話した時に言っていたわ。僕がいつも唯一ひとりになれる場所。それは北東の灯台の上だって言っていたから気を集中して、浮遊して会いに行き話し合ってくるわ。それでは出来るかやってみるね?エイ!」


 ”ヒュウ~~” ”ヒュウ~~” ”ヒュウ~~”


「あれ~?灯台の上に来た。嗚呼……誰かいる。それも……この世の者とは思えない美しい男」


「嗚呼……澪さん僕です。あの怪獣のジャクソンです」


「余りの変わりようにビックリしました。嗚呼……ところで……女神シェリ-さんの事ですが、余りの傍若無人ぶりに……どうしたらいいものか?これだけの被害も出ておりますので……」


「僕としては、こんな残酷な女神は、この「ピンクの世界」から消えて欲しいのが本音です」


「それでは……女神シェリ-を悪魔祓いをして暫くの間眠りに付いてもらい、成果が現れれば復活させると言うのはどうですか?」


「それが僕が一番望んでいた事ですお願い致します」


     ◇◇


 悪魔祓いの聖なる儀式が執り行われた。

 十字架をかざし厳かに儀式は始まった。

 あの化け物となった夫「モササアンキロサウルス怪獣」の力を借りて儀式は始まった。それはこの悪魔祓いの儀式で、空恐ろしい事が起きることが目に見えているからだ。


「オノレ————ッ何をする!グウウウウッ!グヮォ――ッ!ハッ!離せ!」

 すると目の落ち窪んだ醜い姿に変わり飛竜となり、口から恐ろし勢いで炎と猛毒を吐き出し暴れ出した。


”ゴォ————————ッ!“ ”ゴォ———————ッ!”          

”ブッキュ————————ン!”

 「コッこれは大変ね!」


「大丈夫です。僕がこの巨体で、いざとなれば嚙みつき押さえ付けますから……大人しくしろ!」

 そう言うと女神シェリ-が暴れるので、巨体の膝の上に乗せて押さえつけて体を締め付けた。すると「モササアンキロサウルス怪獣」の巨大な力には勝てず、悪魔となった女神シェリ-の身体の節々が折れる音がして来た。


”ボキボキボキ” ”ボキボキボキ” ”ボキボキボキ”


「オノレ————ッ!許せぬ!よくも私を裏切りやがって」

 尚も暴れるが、それをものともせず「モササアンキロサウルス怪獣」の夫は、何とか女神シェリ-が暴れないように、きつく抱き抱え押さえつけて儀式は始まった。


 エグゾルチザムス・テ、オムニス・インムンドゥス・スピリトゥス


 オムニス・サタニカ・ポテスタス、オムニス・インクルスィオ


 インフェルナリス・アドヴェルサリイ、オムニス・レジオ


 オムニス・コングレガツィオ・エット・セクタ・ディアボリカ。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・      

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・etc


”ギャッギャ――――――――――――――――――――ッ!“


”グヮ――ッグヮグヮ――ッ!“


「オノレ―――ヨクモ…ヨクモ!」


「クッソ―――!」


”ガガガオウガ―――ガォ――――――――ッ!”


”ギャッギャ―――――――――――――――ッ!“

 暴れ狂う女神シェリ―を「モササアンキロサウルス怪獣」の夫が、巨体で押さえつけた結果、やっとのこと悪魔払いの成果が出て大人しくなった。


 そして…今度は、澪の手かざしで気を集中させてベッドの上で女神シェリ-は眠りに付いた。


「ありがとうございました!本当に助かりました」


「いえいえ……これからは平穏が訪れますように……」


「嗚呼……僕はあまり力にはなりませんが、人を助けたいと言う気持ちだけは誰にも負けません。嗚呼……それから…『ピンクの世界』の神様はどこにおいででしょうか?」


「本当に心強いお言葉有難うございました。それから…神は女神シェリ-になりますが、悪事の限りを尽くすので祈りに値する神ではありません。ですから女神シェリ-が目覚めて、それに相応しくなった折にはまたおいで下さいませ」


 こうして…第三の世界「ピンクの世界」を後にしたアンディ王子と澪だった。



 有難うございます!この度は本作を御目に留めて下さり嬉しい限りでございます。もし少しでも気に入って頂けたら作品♡★フォローをお願いします!



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