第10話 勝負 ~エルフ姉妹と、"妖刀使い”~
『・・・お慕い、申し上げております。 我が、“主君”。 』
背中の大剣が、“警戒しろ”とでも言うように、小刻みに震える。
怪しげな雰囲気の東洋人の女が、“アルファ”の真横に立っていた。
黒い和装で、長い黒髪は乱れ、顔からしたたる汗が、妖艶さを際出たせる。
姫カットの長い黒髪の女は、首をかしげて、"じッ”と"大剣使い”の目を、覗き込んだかと思うと、美しい白い顔を近づけた。
赤い舌が、“ぞわり”とマスクの上を、ゆっくり撫でる。
「あぁ、わが殿、久方ぶりの
“大剣使い”の背負う大剣が、抗議するかのうように、“カタカタ”と小刻みに震える。
「くくっ・・・。これは、これは、“女王陛下”、お久しゅうございます。
相変わらず、ご機嫌が
活発な“姫君”も、ご壮健そうで、大変よろしゅう、ございますわねぇ。ひひっ。」
腰まで届く長い黒髪の女は、“アルファ”から、さっと体を離すと、大げさに腰を折り、“大剣”に向かって、深々と頭を下げた。
仲間どうしで、張り合わないでね。
はやく、マスクを着けてね?
あと、約27分したら、“倉庫”に帰ってもらうからね?
“アルファ”は、“妖刀”が装備を整えるのを補助し、ペストマスクやゴーグルを装着し直すのを、手伝った。
当然、長い髪は、入りきらなかったので、軽く結った。
“脇差”さん。
いつも、笑顔が多くて、素敵だよね。
俺、パーティリーダーだから、言わせてもらうけど。
さっき、無表情で、両目を見開いてガン見しながら、抜き身の刀持って、顔のすぐ横に、立ってたんだけど、どうしてかな?
理由を聞いても、いいかい?
ふ~ん、そうなんだ。
ありがとう、気持ちは、嬉しいんだけどね。
俺、ご飯粒が、顔に、付いているのかな、って思ったじゃん?
俺さ、びっくりしちゃった。
ところでさ、"脇差”さん。
“ソーシャル・ディスタンス”って知ってる?
普通の人にはね、話すときに、適切な"距離”が、必要なんだよ。
「っふふ・・・。
殿は、“表”の私と、『どちらが先に、目標にたどり着くか』、”距離”と“時間”の、勝負を、されていたようですね。」
「では、ワタクシとは、獲物の“数”で、勝負を致しましょう。・・・ククッ。」
黒髪ロングの"妖刀”は、笑いながら、顔の前に掲げた、刀をゆっくりと舐めた。
あッ!
この人、また、マスク外してるッ!
うん、暑くて、視界も制限されて、苦しい、とは思うよ。
ダンジョンの空気は、人体に有害なんだよ?
直接、姿を見たら、ヤバイって奴も、ゴロゴロいるし!
『敵に“顔バレ”するから、顔を隠せ』って、訓練キャンプで、習ったでしょ?
不可視の“ステルス”忍者だから、問題ないって?
忍者なら、覆面くらいは、して頂けないでしょうか?
え、"今まで、顔を見た奴は、全員、ヤってきた”?
敵が、"知覚共有”してたら、どーすんのさ?
ホント、キミの行動は、感情の
最期の一言は、"地雷”だったらしい。
「失言でした。 申し訳ありませんでした。 ごめんなさい。」
「もし勝負に“私”が勝ったら、“な ん で も” 言うことを、聞いて下さいね?」
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