【SAN値直葬】異界の神殿に囚われていたエルフが、平兵士の俺に懐いて離れない。いい加減離れてくれ!この俺の大剣が、お前の血を吸いたいと、夜な夜な、すすり泣くんだよぉ!(舌なめずりしながら)【絶対無双】
読んで頂けたら、うれしいです!
第1話 強襲 ~エルフ姉妹と、特務部隊~
『“レイドリーダー”から、“本隊”各位に告げる。突入予定時刻60分前。
降下に備え、各員は、装備を最終点検せよ。』
もうすぐ、部隊の中核となる“本隊”が、“海底都市”の主要目標に突入を開始する。
海底都市目指して、海中を高速で突き進む巨大な潜水艦内の、狭く暗い船倉内部にて、すし詰めになっていた、数十人の若い男女の一団は、雑談をやめ静かになった。
緊張した面持ちで、顔を引き締め、助け合いつつ、下着の上から、素早く装備を身に着け始めた。時に、予定よりも早く叩き起こされ、船倉に集められた事に、まだ文句を言いながら、仲間の装着を手伝う。
黒い服装に、中世ペスト医師のようなマスク、ゴーグルを付け、最後に手袋をまとう。この“組織”の実働部隊は、皆同じマスク、同じ黒い装備だ。
新入りには、最新の装備が優先的に配分されるが、基本的な黒と、特徴的な“くちばし”マスクは、変わらない。快適さが向上しているそうだが、視界が悪く、音が聞こえにくいうえ、非常に暑苦しいに違いない。
ぶつぶつと文句を言うささやき声が、あちこちから聞こえてくる。
すでに故障の有無を確認済みの、巨大な武器を、最後、出撃の直前に身に着ける。
武器には大きな違いもある。背中の固定具に、身の丈に合わない大剣をつける者もいれば、大盾を装着する者もいる。前衛は、組織の伝統どおりの大剣を装備しているが、後衛は盾を装備する。盾の裏に、得意な武器や秘密の装備が仕込んであるのだ。
組織が、大盾や通常の盾を制式装備として認めるようになったのは、ごく最近だ。
それまでは、盾が必要なら少ない給料から自腹で、装備を購入するしかなかった。
個人の給金では、入手できる装備には限界があるので、非常に高価な装備がタダで支給されるのは、ありがたいことだ。
まあ、喜んで剣や盾を磨いている新入り達も、すぐに細かな装備や、支給されないアイテムは、自腹で買う羽目になることに、気づくだろうが。
武器に関して、もともと、組織の戦闘方針は、
「守ったら、負けるッ!攻めろッ!」なのだが、近年になって人員の損耗率の多さに頭を悩ませて、遂に長年の方針を改めた。
結果は良好で、特に新入り達が、色々な理由で“消える”ことが、少なくなった。
頭の固い長老たちを説得したうちの一人は、先ほどの声の主である“レイドリーダー”らしいという噂だ。
最近の若者は、敵との距離を詰め、大剣で切りかかる前に、やられてしまうのだ。
なんと、嘆かわしいことか。
ベテラン達は嘆くが、このままでは“異界”の“進化”には勝てないという危機感は、共通して持っている。
ほとんどの隊員が、装備の確認を終える時期を見計らい、一人の体格のいい年配の男が、集団の中央に進み出た。
武器のほか、部隊員を見分ける、ほんのわずかな違いは、マスクや装備の襟首に記された、白い記号、組織での階級だ。
年配の男は、他と異なる階級をつけているのがわかる。
本隊の幹部たちを除いて、最先任となる、上級特務軍曹のハートマンだ。
「おはようッ!! 兄弟姉妹の諸君ッ!!よく眠れたかッ!? 」
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