第12話 生贄 ~エルフ姉妹と、“大金庫”~

 ※この作品には過激な表現(残酷描写、暴力描写や性描写)を含みます!

  ご注意下さい。



『“マナ”の流れを、たどれ! “秘宝”は、近いぞ! もう、この先、すぐだ!』



 パーティ“アルファチーム”の二人は、油断なくマナを探知し、マナの流れが集中している場所、つまり、任務目標の“秘宝”が、ありそうな部屋を探す。


 黒装束にペストマスクの出で立ちのパーティは、“探知魔法”を発動させた。


 二人のゴーグルから、赤い光が走る。


 マナが集中している場所を再確認し、“黒い神殿”の廊下を進み続ける。



 パーティ会場のような、「深きもの共」の嬌声が、騒々しく聞こえてくる。

 この奥で、酒を飲み、宴会でもしているのか?


 俺たちに追い立てられ、やけになって”最期”の瞬間を、楽しむと決めたのだろう。

 廊下で、すれちがった「深きもの共」を、片づけながら奥へ進む。



 多数の巨大な配管が、1つの部屋に繋がっている。

 大部屋の“金庫室”があるようだ。

 分厚く丸い大扉が、行く手を阻む。


 丁度いい。

 そろそろ、使っておこうか?

 金庫の大扉を壊すなら、いつも使い慣れた、万能な爆発物がある。



「・・・“アリアドネの糸”、設置完了。」

「よし、離れろ! ・・・起爆!」


 爆音を立てて、大金庫の扉が吹き飛ぶ。


 ビューティフォー!


 俺は心の中で、阿吽あうんの呼吸で動く、サムライ娘に喝采を送る。

 相棒は、指先が器用である。


 彼女が紡ぐ、爆発は、“芸術”だ。

 この爆発の“音”が、任務成功の“祝砲”になれば良いが。


「クリア!」

「排除完了。」


 粉塵が舞う中、大金庫に突入した。

 扉の周辺にいた、武器を持った怪物どもを吹き飛ばし、確実に“処理”していく。



 もっと価値が、あるものは、奥か?


 パーティリーダー“アルファ”は、腕を素早く振り、ハンドサインで相棒に“前進”を指示する。


 小回りが利く、相棒に、前を任せたい。 

 普段と違い、満足に“大剣”を振れないのだ。

 金庫内にある宝物の“回収”に、専念するか。

 

 大剣使いの“アルファ”の体は、重いままだ。

 ますます、体中の痛みが増すのを、感じる。


 時間経過で、“蓄積”しているのか?

 それとも、形容しがたい“ナニカ”に近づきすぎているのか?

 

 この“デバフ”は、敵の“呪い”か?

 クソっ、一体どこでくらったんだ?

 いくつか試した“回復薬”で、まだ解除できない。


 呪いの発生源は、どこだ?


 まあ、ダンジョン“異界”内では、心当たりが多すぎて、わからん。

 最後に、全てを、吹き飛ばせば、“解消”するだろう。


 

 ?

 背中から感じる振動が、気になる。

 背負った“大剣”が、わずかに震えたようだ。


 どうした・・・?

 警戒が、必要なのか?

 金庫の“秘宝”が入った宝箱に、“ブービートラップ”でも仕掛けてあるのか?


 何か、嫌な予感がする。






 縁に縁どられた、黒い布がかかった「大部屋」に、二人はたどり着く。

 入口に入ると部屋の内部は、赤い布が敷き詰められており、柔らかいじゅうたんが、底に敷いてあるようだ。


 奥の様子は暗くてよく、見えない。

 ほんのり天窓からの、かすかな明かりに照らされた、部屋の中央の台座に、「深きもの共」が密集して叫び、武器で何かを打ち付けている。



 祭壇で、鎖に縛られた、ふたりの少女が、魚人どもに、なぶられているのだ。

 大勢の「深きもの共」に囲まれて、細身の身体を、武器で傷つけられ、二人の娘は、苦しそうに、かすれた声で悲鳴を上げ続けている。


 一人の金髪の長い髪の少女は、豊満な胸が大きく揺れ、煽情的な衣服を身にまとっている。

 金銀や宝石で飾りつけられた、半透明の薄い布で、わずかに体が覆われているが、大事な部分は、隠れていない。


 もう一人の髪が短い金髪の少女は、ボロボロで傷だらけだ。

 衣をまとわず、痩せた体に、何かの幾何学模様や象形文字らしき“タトゥー”が全身に刻み込まれている。

 背格好は、横の少女と、ほとんど同じだが、腹部の“へそ”の周りの皮は垂れ、ゆるみきっている。


 リーダーの“アルファ”には、そこまで細かいところまでは見えなかった。

 だが、瞬間的に怪物どもの動きで、何が行われているか察することができた。


「深きもの共」の巣穴の奥底に、連れ込まれた異種族のメスの末路は、どこも変わらない。


 吐き気がする。身体が思わず反応している。



「この、外道どもがッ!!」

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