第7話 両断 ~エルフ姉妹と、“青い鳥”~

『来いッ!来いよッ!クソッタレの化け物めッ!』


 巨大な迷宮“異界”の海底神殿の石柱群で、大剣使いの“アルファ”は叫んだ。

 盾役として、敵をおびき出し、目視可能な距離で、敵戦力を“分析”しなければ!


 敵の爆撃を回避し、時には大剣で防ぎながら、“アルファ”は大きな音を立てて、叫び続ける。


「どうした!?


 臆病なチキン野郎!!


 俺が怖いのか!? 


 近づいてこい!!」



 やがて、敵はシビレを切らしたようだ。


 なかなか、遠距離攻撃が当たらないから、いらついているのか?

 

 青白く薄暗い、巨大な石柱群の影から、巨大な影が急降下してくる。

 奇怪な鳴き声を上げながら、羽の生えた大きな青い鱗と大きな爪が生えた怪物が姿を現した。

 口元から、無数に生やした牙の間から、シューシューと威嚇している。


 今だっ!

 

 “アルファ”は、“鑑定”と“分析”を発動する。


 ・・・こいつは、雑魚だッ!飛行タイプ、“シャンタック鳥”!

 仲間のペストマスクのゴーグルに、鑑定した敵の情報を“念写”し、共有する。


「落とせ!“シリュウ”!」

「おうッ!」

 黒髪の女剣士が、応える。

 隠密スキルの“ステルス”を解き、大きな刀を抜刀し、狙いを定め大きく振った。


 ズバッ!ザシュッ!!


 「ギィャァアー!!」

 固い鎧のような鱗を持つ怪物の、大きな悲鳴が木霊する。

 怪物の青い翼には、深い傷口が広がっている。

 

 サムライ娘“シリュウ”の“飛ぶ斬撃”『真空切り』。

 

 彼女の太刀筋は読めず、間合いは長大だ。

 空中を、無数の斬撃が、無軌道に舞う。

 不可視の衝撃波を見切るのは、困難なはずだ。

  

 攻撃が届かないはずの位置で、ダメージを受けた怪物は、大音量で叫びながら、動揺しているようだ。

 

 態勢が大きく崩れ、落下しはじめる。

 

 「いいぞ、よくやった!」

 “アルファ”は、フウッと深呼吸し集中すると、空中に大きく飛び上がり、怪物の首に大剣を振りかざす。


 動きを止めた巨大な体は、空中では、でかいだけの的でしかない。


 赤い“オーラ”をまとった大剣は、怪物の体を一刀両断した。

 

 青い怪物は、力なく地表に墜落し、肉がつぶれる大きな音がする。


 アルファは、念のため慎重に、ゆっくりと怪物の体に近づき、大剣で心臓と思しき位置を確実に破壊する。

 「削れ!我が麗しの“魔剣”よ!」 


 特に、再び立ち上がってくる様子も、なさそうだ。


 パーティーは、安堵の吐息を吐いた。


 なんだ、意外と、あっけなかったなぁ。

 いえいえ、俺たちが強すぎるんですよ。



 その時、地下空間に、満足そうな大きな声が響いた。




「うめぇ!! この鳥っ、めっちゃ、うめぇ!!」

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