第6話 奇襲 ~エルフ姉妹と、爆撃~

『上から来るぞッ!気をつけろッ!』


 黒髪ポニテのサムライ娘“シリュウ”が、鋭く叫ぶ!

 敵の攻撃に合わせ、パーティ“アルファチーム”は、素早く散開した。


 海底神殿の最下層、広大な地下空間には、大樹のような巨大な石柱が林立していた。

 青白い光が、石柱群を幻想的に照らしている。

 その静寂な空気は、破られた。


 さらに、爆発音が響く。


 石柱と石柱の間から、正確にこちらを狙ってくる。

 敵からは、こちらが見えているのか?


 爆炎と煙のせいか、敵の姿が見えない。

 わずかな羽音から、敵が近くにいるのは間違いないのだが。


 黒衣をまとった女剣士“シリュウ”の姿も見えない。マナ反応もない。

 隠密スキルを発動し、“ステルス”忍者モードになったのか?

 あの技、通信やマナ反応が不安定になるから、リーダーとしては、少し不安になるんだよなぁ。


「“シリュウ”、敵はどこだ?

 こちらからは、姿が見えない。マナ反応もない。

 そちらから、“見える”か?」


「大丈夫だ。落ち着け、相棒。」

 女忍者が答える。


「敵の位置は、相変わらず“リーダー”の背中にぴったり張り付いてる。

 6時方向。距離500M、上空100M。ゆっくりと、3時方向へ移動中」


 むっ、意外と近いな。

 “アルファ”は、3時方向、つまり、右の方を見る。

 今度は、彼女を狙っているのか?


 もう一人のパーティメンバーの“吸血姫”は、半身を小さなコウモリに変えながら、空中にフワフワと浮かんでいる。


 ゆっくり十字に腕を交差して、ストレッチしているようだ。

 今度は「イッチニ、サンシッ」と言いながら、ゆっくりと屈伸を始めた。


 ・・ッ! 

 その準備運動は、時間が、かかるやつだ!

 最後の“深呼吸”まで、約5分はかかるだろう。


 昼間に“吸血姫”が目覚めたということは、強敵の可能性が高い。

 迅速に対処する必要がある。


 「“シリュウ”、“飛ぶ斬撃”で奴を狙えるか?」

 「ああ。いつでもいけるぞ。奴の“鑑定”結果は?」

 クールな女剣士は、冷静に問い返す。


 「まだだ。距離が離れすぎている。

  石柱が、邪魔だ!炙り出すぞッ!」

 “アルファ”が吠える。

 こんな時、斥候の“カルロ”が居てくれたら、鑑定や陽動は容易いのに・・・。

 

 今回の“おとり”や“盾役”は、一番、耐久が高い、俺の仕事だな。

 俺は“リーダー”なのだが・・・。


 “アルファ”は、独り、心の中で愚痴る。


 もちろん、仲間を守るためだ。

 俺の専売特許“盾役”は、“吸血姫”にだって、譲るつもりはない。

 

 “アルファ”は苦笑すると、“組織”で過ごしてきた過去を振り返りながら、

 “我に、先人達の加護あれ”と、軽く祈った。

 防御能力の底上げは成ったか? 


 敵の爆撃を避けながら、少し開けた場所に出る。

 大剣を掲げ、大きな声で戦う意思を叫び、相手を挑発する。


「来いッ! 来いよッ! クソッタレの化け物めッ!」



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