第14話 救護 ~エルフ姉妹と、応急処置~

※この作品には過激な表現(残酷描写、暴力描写や性描写)を含みます!

 ご注意下さい。



『6秒間、深呼吸しろ、“シリュウ”。』



 生贄の間で行われていた残虐な行為に、サムライ娘は、完全にプッツンしている。


 怒りをコントロールする技術“アンガーマネジメント”を、赤鬼に思い出させる。



 返り血をぬぐい、“シリュウ”は謝りながら、こちらに無表情な顔を向けた。


「・・・・・・・・・・・ああ、 悪い。」 

「すまないな。 つい、 カっとなって、 しまった。」


 荒い呼吸で、ひとこと言葉を吐き出すように、つぶやいた。


 “シリュウ”は、少し深呼吸をして、笑顔をつくり、アルファに話しかける。


「ふぅ。彼女達を縛る鎖は、強力な“力”で守られていて、私では”切れなかった。”」

 

 邪神対策の必殺技、“秘剣”でも切れない、なんてことがあるのか?

 “物理無効”だろうか?


「無理に壊すと、良くないことが起こりそうな予感がしたので、鎖を覆う“力”を削る だけに、しておいた。」

 

 ふむ。完全に無効化できていた訳ではないらしい。

 いずれにしろ、厄介な鎖だ。

 上手く、鑑定が働かない。

 


 ゆっくり回復薬を飲み、黒髪ポニテの女剣士“シリュウ”の顔に、少し笑顔が戻る。

 

 だいぶ、無理してないか?

 パーティリーダーの“アルファ”は、仲間を気遣う。


「……相棒、30人分の衣服と、回復薬を、頼む。」 


 

 おうよッ!

 準備しておいたぜ。


 既に、いつでも“倉庫”から出せる。

 指定された数よりも多く、“箱”に入れて、出しておくか。



 ?

 一瞬で、目の前に集積したはずの、衣類や回復薬の山が消える。


 サムライ娘、“シリュウ”の姿もない。反応は、部屋の奥の牢獄らしき場所にある。


 俺は、記憶が飛んだり、意識が混濁しているのか?

 俺の全身に走る激痛、“呪い”のせいだろうか?


 いいや。

 “シリュウ”が、加速魔法を使い、“超スピード”で動いているだけだろう。


 服と布をかけられ、口元から“回復薬”をたらし、目が虚ろな二人の少女を見る。

 パーティーリーダーの“アルファ”は、油断なく“鑑定”し、鎖につながれた相手を分析する。

 

 亜人タイプ、“エルフ族”。


 大陸の秘境に、ごくわずかしか、住んでいない非常に珍しい種族だ。

 長い耳と高い鼻、白い肌に金髪と、なるほど、確かに伝説通りの容姿だ。


 なんで、こんなところにいるんだ?

 海底都市の地下深くまで、“転送”魔法で、無理やり連れてこられたのだろうか?


 やっかいな事に、何度“鑑定”しても、カルマ属性が、上手く判定できない。



 “怪しきは、罰せず”などと言うのは、善属性の人間達だけだ。


 “組織”の方針は、“疑わしきは、殺せ。”

 

 それに、“亜人は、人間ではない。”

 

 古来から続く、“組織”の大方針だ。


 もちろん、いずれの方針にも、“ただし、同志の兄弟姉妹は除く場合がある。”という例外規定がある。


 さて、彼女が、戻ってくる前に……。



 「……怖い顔をして、どうした? “アルファ”?」

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【SAN値直葬】異界の神殿に囚われていたエルフが、平兵士の俺に懐いて離れない。いい加減離れてくれ!この俺の大剣が、お前の血を吸いたいと、夜な夜な、すすり泣くんだよぉ!(舌なめずりしながら)【絶対無双】 読んで頂けたら、うれしいです! @KEROKERORI

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