第3話 出た!〇ャークさんのマジックコンボだ!
廊下から聞こえてきた轟音の後に、それは流れた。
《綾部玲士は[ゴブリンLv6]を倒した!》
《綾部玲士は[ゴブリンLv5]を倒した!》
《綾部玲士は[ゴブリンLv4]を倒した!》
《綾部玲士は[ゴブリンLv6]を倒した!》
《綾部玲士は[ゴブリンLv9]を倒した!》
《綾部玲士は[ゴブリンLv7]を倒した!》
《綾部玲士は[ゴブリンLv4]を倒した!》
《綾部玲士は[ゴブリンLv6]を倒した!》
《綾部玲士は[ゴブリンLv10]を倒した!》
《綾部玲士は[ゴブリンLv5]を倒した!》
《綾部玲士は[ゴブリンLv8]を倒した!》
《綾部玲士は[ゴブリンLv6]を倒した!》
《綾部玲士は[ゴブリンLv9]を倒した!》
《綾部玲士のレベルが上がった!》
《綾部玲士はLv15になった!》
《綾部玲士はSPを8獲得!》
《称号:幸運の効果で獲得SPが倍になった!》
魔物を殺したことを教えてくれるアナウンス。未だに男子トイレに潜んでいるので、外の様子がわからないから助かるー。
どうやら、俺の思い付きは上手くいったようだ。
倒せたのが十三匹だから、半分以上は削れたってことか。
なかなの上振れだな。最悪、一匹も倒せない可能性もあったし。
俺が今回使った魔法は、
【細石】。
【石柱】。
【土蛇】。
【石爆】。
の、四つだ。
まず最初にゴブリンをトイレに誘い込むときの使ったのは、【細石】。
これは使用すると小石が生成される。
飛んでくわけでもなく、手のひらの上にぽつんとちっちゃな石が現れるのだ。
効果がわかっていても『大丈夫なのかな?』と思ってしまうが、当然ただの小石なわけがない。というか、普通の石作るだけの魔法とかあってたまるか。
【細石】の真価は、生み出される小石に俺以外のモノが触れることで発揮される。
俺が【細石】の小石を床に落とした音に釣られた三匹のゴブリンは、トイレの中に無警戒に入って来た。
俺はトイレの個室に身を潜めており、姿は見えない。だが、トイレの中で隠れられる場所などそう多くはない。相手がいくら知能がそこまで高くなさそうなゴブリンでも、用具入れと個室の中を確認する程度のことはするだろう。
その瞬間、ゴブリンたちの意識は個室と用具入れに固定される。つまり、足元から注意が逸れるのだ。
床への警戒をおろそかにした三匹のゴブリンは、まんまと音を出すのに使ったまま転がっていた【細石】の小石を踏んだ。
――――瞬間、ゴブリンたちの身体に、小さな石が幾つも付着していく。
突然の出来事に驚き戸惑うゴブリンたちだが、遅すぎる。いくら払いのけようとしても、小石は加速度的に増殖し、ゴブリンの体表を覆っていった。
細石とは、細かい石や小石が集まって巌となったモノをさす言葉だ。その言葉通り、この【細石】は小さな石の集合体で対象を覆い、動けなくする拘束魔法。
ぶつけても良し、野外なら地面に置いといてもまったく違和感を覚えられないから、強力なトラップとして使用できそうだ。
さて、まんまと魔法にかかってくれたゴブリンに対して俺が使ったのは、前にも使った【石柱】である。
平面から勢いよく石の柱を出現させるこの魔法を、【細石】で動けなくなっているゴブリン三匹にブチ当てたのだ。
トイレの中から廊下へ逆戻りしていったゴブリンたち。
そんな奴等の近くを狙って発動したのは、【土蛇】という魔法。
この魔法は地面から紐状の土を生やし、それをまるで生きた蛇のように操れる。
一度生やした位置から動かせないという制約はあれど、かなり自在に動かすことが可能だ。
それこそ、【細石】で小石まみれになった三匹のゴブリンをぶん投げることができるくらいには。
【土蛇】によって投擲物と化したゴブリン×3。それデカゴブリンと残りのゴブリンがいる群れに近づいた瞬間に発動した魔法こそが、今回の肝。
【土魔法Lv8】で習得した、現在の最高位魔法である【石爆】だ。
この魔法の効果は至ってシンプル。術者である俺の魔力が籠った石を爆破する。ただそれだけ。
しかし、内部から凄まじい勢いで爆発する石は、衝撃と鋭い破片と凄まじい勢いでまき散らす。お手軽破片手りゅう弾って感じ。威力と規模、そして消費魔力は、爆破する石のサイズに左右される。
そしてこの魔法、俺の使う他の魔法との相性が凄まじくいい。
【礫牙】、【石垣】、【細石】、【石柱】。それに、もう一つの使っていない魔法も。
これらの魔法で出現させた石は全て、俺の魔力が宿っている。というか、俺の魔力から生成しているんだから当たり前だ。
つまり、【石爆】はそれら全てを爆弾に変えることができる。
【礫牙】が命中した瞬間に爆発させるとか、それこそ今回みたいに【細石】で拘束し、そのまま爆殺するなんていうエゲツナイコンボも出来るのだ。
その凶悪さは……まぁ、アナウンスが知らせてくれたゴブリンの死亡報告が物語っているだろう。
さぁ、まだ策は終わっていない。デカゴブリンをぶっ殺すには、もう数手必要だ。
俺は隠れていたトイレから身を翻し、廊下に出る。
【石爆】で起こした爆発の影響で、廊下は砂煙が凄まじい。さらには爆発音を至近距離で聞いたのだ、デカゴブリンの耳はロクに機能していないはず。
つまり、俺が廊下に出ていることにまだ気付いていない。
俺からもデカゴブリンと残りのゴブリンどもが何処にいるかわからんが……それなら、見えなくても問題ない方法で攻撃すればいい。
「――――【土棘】!」
魔法名を叫び、床に手のひらを叩きつける。
すると、そこを起点にして地面から飛び出た棘が前方に広がっていく。
土で出来た棘の波――そんな印象を受けるこの魔法は、範囲攻撃だ。見えていない相手だろうと、おおざっぱな位置さえわかれば問題ない。
さぁて、視界は未だに遮られているが、結果は……。
《綾部玲士は[ゴブリンLv7]を倒した!》
《綾部玲士は[ゴブリンLv8]を倒した!》
《綾部玲士は[ゴブリンLv10]を倒した!》
《綾部玲士は[ゴブリンLv8]を倒した!》
《綾部玲士は[ゴブリンLv9]を倒した!》
《綾部玲士は[ゴブリンLv9]を倒した!》
《綾部玲士は[ゴブリンLv9]を倒した!》
《綾部玲士のレベルが上がった!》
《綾部玲士はLv16になった!》
《綾部玲士はSPを2獲得!》
《称号:幸運の効果で獲得SPが倍になった!》
ありがとうアナウンス。これで、殺したゴブリンは二十三匹。
事前に数えておいたデカゴブリンの取り巻きの数も、二十三。
さぁ、これで。
「タイマンなっちまったなァ。デカゴブリンさんよォ!」
「グガアアアアアアアアアアアアッ!!!」
残るは、コイツだけだ。
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