眼下の敵
──1941年12月18日──
第四艦隊が第二次ウェーク島攻略計画を立てていた頃、軽巡那珂以下四水戦はリンガエン湾上陸部隊を乗せた輸送船共々馬公から出撃した。
12日にフィリピンのピガンで空襲を受けて馬公に戻る途中、敵の潜水艦を発見するも取り逃がしていたので損傷箇所を修理しながら対潜能力に優れた艦の応援を待っていたのである。
だが出港早々増援としてやって来た鵜来型海防艦、能登の艦橋では混乱が起きていた。
「奴さんは素人なのか?」
「判りませんが好機なのは確かですな」
艦長と副長は揃って左前方を注視していた。
視線の先には白波を立てる潜望鏡があったがその距離が問題だった。
「左三〇、距離二(〇〇)」
「左半速、右原速。
戦闘爆雷戦」
艦長の号令に投射器の周りに居た兵達が動き出す。
「調定深度四〇」
「第一投射法」
「投射用意」
「撃て」
片弦8発の爆雷が投射されたが、付近の水深は20m足らず。
しかし水圧式ではなく時限式だった為問題なく作動。
海底の土砂を巻き込んでキナ臭い水柱が立つと周囲に降り注いだ。
「被害状況知らせ」
「……左舷損害無し、死傷者無し。
……ただ敵の肉片や油で甲板が酷い事になってます」
「了解。
辛いだろうが洗浄を頼む。
船団には徴用した漁船が何隻か混ざっていた筈だから海面に浮いてるのはそれらに任せよう。
通信長、那珂に連絡。
『我敵ノ潜水艦撃沈セリ。敵遺留品回収ノ為漁船派遣ヲ乞フ。
本艦ハ対潜警戒ヲ続行ス』と」
「了解」
一部の乗員にトラウマを残したものの、能登は敵の潜水艦(後にスタージョンと判明)の撃沈に成功した。
※スタージョンが護衛艦の200m近くで潜望鏡深度まで浮上したのは史実です。
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