バリクパパン沖海戦

 一九四二年一月二十三日の夕方、四水戦に護衛されボルネオ島を右に望みつつ南下していたバリクパパン攻略部隊は空襲を受けようとしていた。


 陣容は、


 軽巡洋艦那珂

 第二駆逐隊 村雨、夕立、春雨、五月雨

 第九駆逐隊 朝雲、夏雲、峯雲

 第二四駆逐隊第一小隊 海風、江風

 哨戒艇三隻 第三十六号哨戒艇、第三十七号哨戒艇、第三十八号哨戒艇

 第百七戦隊 能登、高見

 第三十一駆潜隊

 第十一掃海隊


 輸送船

 敦賀丸、りぱぷーる丸、日照丸、愛媛丸、朝日山丸、日帝丸、球磨川丸、須磨ノ浦丸、はばな丸、漢口丸、帝龍丸、呉竹丸、金耶摩丸、藤影丸、辰神丸、南阿丸


 である。


「電探に感! 方位二三〇、距離一五〇〇」


「那珂より入電! 『敵編隊ヲ認厶、各艦は輪形陣ヲ成セ』」


 能登艦橋に電信員の声が響く。


「進路そのまま。 対空戦闘用意」


 能登は最前列の横陣の中で最も陸に近く、航路変更の余地が殆どなかったのだ。


「チッ、眩しくて見えん」


 夕日を背に十三機の爆撃機が襲い掛かって来た。


 横合いからも一機飛び出て来る。


「止めろ!下駄履きだ!味方だ!」


 那珂が射出した水偵を敵と間違えるも分隊長が肩を掴んで止めた。


 だが輸送船団を護りきれず辰神丸が損傷。


 ガソリンを満載した南阿丸が炎上した。


 南阿丸の乗員は峯雲に収容されたが、敵の攻撃は尚も続く。


「左四十五度、距離二〇、音源一、魚雷発射管注水音」


「取舵一杯、舵戻せ。戦闘爆雷戦用意!」


 左旋回をかけた能登艦内に悲鳴に近い追加報告が入る。


「左三〇度敵潜発見、魚雷発射! 那珂に向かいます!


 相対距離一〇!」


「砲戦用意!」


 命令に初動の早い機銃が火を吹く。


「いかん。 那珂は機関が──」


「左五度、駛走音二、爆雷投下音一」


 報告と共に水測員がヘッドホンを外した直後、一本の水柱が立った。


「ああ、やられた……」


「いえ、那珂健在!」


 「まさか──爆雷で?」


 周囲の船上に驚きが広がる中、那珂は朝雲、峯雲、夏雲を引き連れ東方沖合に移動。


 能登は探照灯を照射しながら重油の帯を残しつつ遠ざかる敵潜の無力化を継続した。


 「方位三二〇度、後方より高見接近。 距離一二!本艦右舷に抜ける模様」


「方位一八〇度、敵艦発見! こちらに向かって来ます。


 数四」


 「右砲戦用意!煙幕を張れ」


 号令に潜水艦相手に撃ち損じた主砲が火を吹いた。


 高見は丁字になっていた為爆雷を捨てつつ全ての砲を先頭艦目掛けて発砲。


 那珂は輸送船団が射界に入らないように右反転し、図らずも敵艦隊と反航戦になった朝雲、峯雲、夏雲の三隻は砲撃しつつも距離一万mで魚雷を発射。


 合計十二本の──未来からの情報と松型駆逐艦の増勢に回され雷装は減少していた──魚雷が輸送船団目掛けて北上する四隻の駆逐艦に五十三ノットの速さで殺到した。


 駆逐隊の砲撃と魚雷は特に三、四番目を走っていたパロット、ポール・ジョーンズに集中。


 パロットは機関部に被弾し航行不能。


 ポール・ジョーンズは魚雷が命中し轟沈した。


 先頭艦ジョン・D・フォードは高見と撃ち合ったが距離が近かった事もあり艦橋と一番砲塔に被弾。


 指揮戦闘能力を喪失。


 二番艦ポープは煙幕の中から能登の砲撃を浴び小破するもジョンを盾に離脱。


 魚雷を発射すると海域から遠ざかっていった。


 能登は回避したがより北に居た須磨浦丸に命中し沈没。


 上部がスクラップと化したジョン・D・フォードと漂流中のパロットは、乗員を収容した後哨戒艦が砲撃処分し戦いは終わった。


 一連の戦いで日本側は南阿丸、須磨浦丸が沈没。


 辰神丸、高見小破。


 連合軍は潜水艦一、駆逐艦三隻を喪失、ポープ小破。


 既に上陸済みだったが輸送船が沈んだので護衛に失敗したと言える。


 連合軍は輸送船三、巡洋艦一を撃沈と報じたが巡洋艦撃沈と送信した潜水艦、K-18が未帰還の為詳細を把握出来なかった。























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