雌伏の時 その二
「はい、立石電機です……理化学研究所?」
室戸台風の被害も落ち着き、復興の為リレーの製造に追われていた立石電機製作所の元に、一本の電話が掛かって来たのは年の瀬も押し迫った12月の事だった。
「新しい
……はい、はい、ありがとうございます。
銀行は……」
「誰だって?」
「理化学研究所からです。
あちらから指定する形の
何に使うんでしょうね」
「知らん。
……おっ、FAXが鳴っているぞ」
「もう送られて来たのか……」
〜東北帝国大学〜
「上手くいってくれよ……」
浩は藁にも縋る気持ちだった。
(戦時中でもないのに品質管理が出来てない上に週一で停電が起こるとは思わなかった……これで五大国?
発展遅れすぎだろ……)
立石電機(現オムロン)に電話したのは
(電圧が不安定で温度管理の概念もない状態で溶接の推進や繊細な真空管、トランジスタの量産は無謀だ。
玉川水力発電所の稼働が40年だから東北で滞り無く生産出来るのはそれ以降だな……)
復興予算を原資に特殊鋼と肥料、農機工場を東北に誘致。
電源開発や砲弾薬、魚雷の製造に活用出来るが未だ工場用地の整地が終わったばかりである。
海軍は油田の開発や友鶴事件の警告の無視に加え、東郷元帥の死去が止めとなり海保に主立って反抗する者は居なくなった。
飴として大分の大神、山口の徳山市に造船所を。
大分港及び徳山港に隣接する形で製鉄所を設置する話は日本製鐵の永野の協力もあり決定。
更に前大戦で英国がUボートに苦しめられた例を挙げ、建造に時間の掛かる潜水艦は呂35型を主力とする事を認めさせた。
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