戦訓

 空襲から数日後、柏で戦訓検討会議が開催された。


 上座には東部軍司令官の中川大将が座り、陸軍から他に畑尾正央、荒蒔義次。


 海軍から伊藤庸二等が出席。


 学界から八木秀次、渡辺寧、高柳健次郎。


 企業は日本無線から上野辰一等が出席。


 末席には小川両兄弟も座っている。


 中川が口を開いた。


「忙しい中の集まり御苦労。


 今の内に空襲で判明した問題点とその解決策を上から下までしっかり叩き込まねばならない。


 二年程で昨日の敵機より百km/h以上速い機体が数倍に。


 三年足らずで二〇倍になってやって来る。


 本来は洋上で叩き落とすべきだったが──」


 中川はそう言うと、ちらりと海軍の列を見た。


 二、三人睨み返す者が居る。


「──空母が居なければ暫くは大丈夫だろう。


 意見のある者は?」


 荒蒔が挙手後立ち上がった。


「航空隊の荒蒔であります。


 試験中の機体で迎撃に上がったのですが、海軍機から敵と思われて撃たれそうになりました。


 翼の日の丸を見せたので何とかなりましたが……。


 それと空襲警報の発令が遅いのであります。


 誤報でも良いから出して欲しいのであります。


 もし基地を攻撃されていたら自分は地上で死んでいたでしょう」


 荒蒔の発言に立ち上がった高柳が、


「現在敵味方識別装置及び機上電探は前線向けに生産を集中しており、配備先でも空中管制機から自機を含め十八機を管制していると聞きます。


 今暫く空域に留まる事で対処して貰いたく存じます」


 と言い着席した。


 続いて伊藤が立ち上がる。


「海軍としては空襲警報の遅れに対し、当座の対応として漁船の無線封鎖を解くと共に、漁船用電探及び管制に柏にある三型の早急な配備、納入を希望しています」


 発言に中川が、


「それは企業と話し合って欲しいが、まあ割り当てがあるからな。


 こうして事前に話を通すなら陸軍として文句はない」


 と答えた。


 他にも軍民の被害報告がなされ、既に日数が経っている事から搭乗員捜索も打ち切られた。


 撃墜された搭乗員の殆どは強い北風と外洋の高波に晒され海底に消え、残りは皆入院中である。


 撃沈した敵空母の名前は捕虜となった爆撃隊搭乗員から聴取し判明したが、漂流物の捜索は生存者救出が優先された為不徹底だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る