休みを奪われた者達の怒り

『番組の途中ですが、速報が入りました。


 東部軍より発表。


 関東甲信越、東海地方の各府県に空襲警報が発令されました。


 これは訓練ではありません。


 繰り返します、これは訓練ではありません』


 突然切り替わった映像に立ち止まった人々は不安げに街頭TVや電光掲示板を見上げていたが、サイレンが鳴るとノロノロと避難を開始。


 これは荒蒔大尉らが敵機を地上で目視する三十分程前の出来事だが、既に海上からは砲声が轟き人々の不安を煽っていた。


 爆撃隊の大半は鹿島灘から関東に侵入した。


 しかし最も早く日本本土に到達した機は高度三〇米で九十九里浜へ侵入、徐々に高度を上げつつ房総半島のど真ん中を横断し、木更津を突破。


 東京湾に到達したが越える事は無かった。


 横須賀上空を覆う阻塞気球に加え、前日横須賀に帰港したばかりの重巡高雄、愛宕他駆逐艦六隻が縦陣を組み待ち構えていたのである。


「対空戦闘用ー意、撃ちぃー方ー始めーっ」


 号令一下、漁船用ソナーを参考にコニカルスキャンを行う射撃用電探に導かれ、上陸が一日延びた男達が怒りを込めて撃った銃砲弾がたった一機のB−25目掛け殺到。


 火達磨になって海面に突っ込んだ敵機に歓声が上がったが、やけに力が籠もっていた。


 この機を含め、東京湾に侵入した敵機は四機だけだったが標定済みの第一、第二海堡と併せた十字砲火に次々に絡め取られ悉く海に消えた。


 

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