第五章 閉じ込められた鷹


事件とはいつも突然起きる……それは、物語でも現実でも同じ事……

それは……突然……私の日常に送られてきた……一通の手紙……

裁判所からだった……内容は……



「親権問題ですか……確かにあの二人には、血縁者である父親が別に居ますが……」

私はそう答えた……確かにいるが、それは、千影さんが親権を裁判で勝ちとってから、音信不通になったと聞く……

「ええ、その男が、親権を訴えているんです」

今さらだが……何となく予想は出来る

「前回親権を奪われた要因はなんですか?」

ちょっと調べてくるので待っていてくださいねと係りの人はそう言って部屋を出る。

二人を連れて来なくて良かった……もし、この事を聞いたら、私に迷惑がかかると言って出て行くかもしれなかった。

「お待たせしました……資料によりますと……金銭面ですね……」

金銭面で親権を奪われた人が親権を主張するか……時期も時期的に……簡単に予想が出来た……

あの弁護士が背後に居るのだろう。

「それで、これは、話し合いですか?それとも……」

そう言いかけたとき……

「娘を返せ!!」部屋の扉が勢いよく開けられ……ガラの悪そうな男が私に掴みかかって来た……

私は反射的に男を避けたが……男は頭から地面に倒れると……腕を押さえて……

「腕が……この男が……俺を突き飛ばした……」と苦悶の表情で……そう言うと……部屋に次々と人が入って来る警察と…………あの弁護士だ……前田孝雄……今日もあの時と同じような憎たらしい顔をしている。

前田は、私と倒れている男を交互に見ると……

「おやおや……いけませんね~暴力は……これだから、フリーターは……良い物を食べてないから、すぐに暴力を振るう」

いきなり、私を悪党呼ばわりか……まったく……どこまで愚かで……

「俺は……この男を訴えるぞ……傷害罪で……」私は……反射的に……地面の男を見る……

なにを馬鹿な……自分から倒れたくせに……

「なにを言っているんですか!彼はこの人が飛びかかって来たから……避けただけで……」

私を係りの人が私を庇うように前に出る

「嘘だ!俺はこの男に突き飛ばされ……腕を痛めた……」

そう言いながらヨロヨロと男は立ち上がる……

まったく……誰だ……こいつは……

「いいや、突き飛ばしたんだ!この男には、岩倉氏に暴力を振る理由がある!」

係りの人が前に出たタイミングで前田も前に出る……

「私が……この男を傷つける理由?」なにを言って……

「なぜなら、この男は、岩倉氏の娘さんを軟禁しているからです!その事を問い詰められて、暴力で解決しようとしたからなのです」前田はそう言って……私を指さした……

軟禁?私が二人を?馬鹿なと……言おうとしたが……次の……前田の言葉で……私の思考は完全に止まった……

「岩倉氏の娘の楓さん、凪さんの親権は既に岩倉氏の手にあります!すぐに二人を解放しなさい!」

ありえなかった……私は何か言おうと弁護士に手を伸ばしたが……前田と一緒に入って来た警察が伸ばした私の腕も掴むと……ガチャン……手錠が……私の手首に……落ちた……

「鷹羽朱鷺、貴方を未成年の軟禁および、売春容疑そして、岩倉氏への暴行の現行犯で逮捕する!」

なぜ邪魔をする?ありえない……ありえない……地面に叩きつけられる感覚……そして……思い出した……この男は……手続きを扱う事が出来たと……借金の押し付け……そして……二人の保護者の移行を……この男は……取り扱っていた……

遅かった……気づくのが遅かった……私は完全に後手に回っていたのだ……

前田が……地面に抑えられた私を見て笑う……

「臭い飯でも食べて……あ……いつもの食事よりも御馳走でしょうね~次は法廷で会いましょう」

そう言うと……私の顔に唾を吐きかけ……岩倉が……私を馬鹿にするような眼で見て……

足が……と言いながらふらついて……私の顔面を蹴った……

鉄の味が口に広がる……

「すまねぇな……お前に突き飛ばされて、足を捻ったみたいだ……まあ、自業自得と思って諦めろや!それじゃあ次は法廷で会おうぜ!」そう言いながら男はゆうゆうと歩き去った……

「ありえない!なんですこの横暴は!彼は何も悪くない!証人になっても良い!彼は……」

係りの人が、私を助けようと警察の人に近寄るが……

「公務執行妨害だ!」そう言われて……係りの人も捕まった……

そして、私はなす術もなく……警察に連行された。



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