第二章 3.この男……娘の自慢が……

「何です話って?」少し歩いて、近くの公園にさしかかったとき、あまり家から離れたくないから立花警部に尋ねた

「まあ、この辺まで来たら、万が一にも盗み聞きはされないから良いか」

立花警部が振り返る

「あの二人は何だ?」

それは当たり前な質問だった……

まだ、あの子達を預かった話をして無かったから、私はそれを話そうとしたが……

「あれは、まだ高校ぐらいの女の子だろ!?まさか、そこまで女性に飢えて……買うなんて……イタ!?」

私は無言で立花警部を殴った

「き……貴様!!公務執行で逮捕するぞ!!」

「私服の非番警官殴っても、知らなかったって言えば、傷害罪しか適用しない!!考えろ馬鹿!!」

「なぬ!?」

事実かどうかは、わからないが、私の言葉に立花警部は驚いていた。

そして、私はため息をつき、説明した。

「義理の姉さんの子供を引き取った」

「ふむ……つまり、お前の大好きな姉さんが、残した子供に欲情して……待て、冗談だ!!殴るな!今日は愛人に会いに行く日で……」

私は拳を退くと、中途半端に勘が鋭いこの警部に頭を悩まされた。


「だけどよ……それが、あのヤクザとどういった関係があるんだ?まさか、借金の取立てを追い出す為に警察を利用したのか?」

「ちがう、念の為に、警部に頼んだんです……まさかと思ったんですけどね……」

土地と家を売れば返せるはずの借金……だけど、金は返済されてはいない……それに……借金の肩代わりに……私が残った事……

「それは、怪しいな……普通弁護士が、そう言った手続きを全て行なうか?」

私の話を聞き、立花警部は首をかしげる……

「まあ、そんな事もあるかな~と思って、会話は全部ICレコーダーに録音して保存済みです」

私は嗜虐的に微笑んだ

「ったく、お前のその癖、いつもながら悪い奴だな~」

もともと、この警部と……いや、当時は巡査長と知り合ったのもこの癖か

「初めて、お前に会ったときも、俺から殴りかかったような証言をされて、危なかった所に、お前が出てきて、そのレコーダーを差し出したな」

近所の悪で有名な金持ちの子供が万引きをして、当時立花巡査長が抵抗の末逮捕したが、この子供は、無抵抗の自分を立花巡査長が殴ったと供実し、訴えられたのだ。

丁度、その話を仮釈放されたこの子供が喋っているのを、私が録音して、それを警察に持って行ったから、勝つことの出来た裁判だ

「で、お前はこれからどうするんだ?」

立花警部が煙草に火をつけながら尋ねてきた。

「そうですね……とりあえず……あの弁護士に訴えかけてみます」

立花警部は大きく煙りを吐いた。

「かぁ~やっぱりそうか……わかった、もし、お前が危険な目に会うならば、俺が手を貸してやる!」

力強いセリフだった……

「感謝してま……」

「だからさ~今度あの子を~楓ちゃんだっけ?今度署で合コンやるんだけどさ~ゴハッ!?」

「なに高校生を、合コンに誘っているんですか!?しかも、愛人がいるのに合コン?また、奥さんに三行半出されますよ!」

「いや~若い方がやっぱり……」

さっきまでの力強さは欠片も残ってない……

「しかも、娘と同じくらいの子でしょ!!冴さんに言いつけましょうか!?」

立花冴……15歳 警部の1人目の奥さんの子供で面識はほとんどないが……警部のおかげで無関係という気はしなかった

「冴に!?すまない!!俺が悪かった!!だから、冴だけには……」

まったく……このダメ警部は……私は呆れた

「いや~最近、パパと一緒に下着を洗わないでって言われてさ……パパショッ~クってよく部下に愚痴っているんだよ~

お前も聞いてくれよ!!」

いや、呆れを通り越して……無様だ……

それから、30分……公園のベンチで、冴ちゃんが、どこまで可愛く、自分の宝かを聞かされ

「いや~どうだ~冴は可愛いだろう~嫁に欲しくなるだろう~欲しいだろう~だがな!!

冴は誰の嫁にもやらない!」

私は何度目かのため息を吐いただろうか……

「なんだよ~38回もため息を吐いてさ~……はっは~ん!さては、冴を嫁に取れない事を悲しんでいるんだろ~」

だははと笑い出した……

そして、私は39回目のため息を吐いた……こんな事を、毎回話されていては……確かに無関係とは思えない……


***

さらに30分経ち……

「じゃあ、俺は愛人のところに行って来るぜ~」

そう言うなり、立花警備は、私に別れの挨拶を告げた……

だから娘さんに嫌われるんでしょう……そう思いながら、私も手を振った。

「思ったよりも時間が……」

私は走って家に帰ると……玄関が、荒らされ……楓さんが、倒れていた……

「大丈夫ですか!?」私は、楓さんの肩を抱き上げる……どういう事だ?なぜ家が荒らされている?他にも仲間がいたのか?

「な……凪が……」弱弱しく楓さんが口を動かす……

「凪ちゃんが……どうしたんです!」まさか……

「凪が暴れて……家を……」私は沈黙した……

「それでは、凪さんが……この家を?」どういう事だ?なぜ、そんな事を……それにさっきの倒れている姿……見方を変えれば土下座に見えた気が……

「ごめんなさい……家をめちゃくちゃにして……」

「ああ、確かに……これは酷いな」私は周囲を見た……下駄箱から靴が飛び出し、飾りも落ちてる……それに、壊れている高さは、凪ちゃんの手が届く範囲だ。

「すぐに、片付けますから……追い出さないでください……凪も……悪気は無く……壊れた物は……どんな事をしても……」

そうか……凪のちゃん為に、楓さんは……

「そうですか……そこまで言うなら、言う事を聞いてもらいましょうか」

「……わかりました……なんでも……」なにやら、覚悟したような言葉になったけど……

「じゃあ、なぜこうなったのか、話を聞こうか?」

「?」楓さんが呆けた

「誰がやったかじゃなくて、どうして、こんな事が起きたのかと……」

「えっ、いや、そうですね!!そこを話さないといけませんね!!」急に顔を赤くして、戸惑う

「どうかしましたか?」

「いえ!なんでもないです!!とりあえず、凪はソファーで寝かせてますから!」

そう言い、ギクシャクしながら、楓さんは歩き出した。

私は、周りをみて、ため息一つ……片付けるので真夜中かな……と考えていた



「つまり……凪ちゃんには、夢遊病があると……」

「はい……母が死んで……少し経ったときに……わかったんですが……でも、家を離れれば……」

「何か言ったの?」

「お家に帰りたい……母さん母さんと……泣きながら暴れてました……」

私は口を閉ざし……

「家に帰してあげたいけど……あの家はもう別の人のものです……そして、あの家も……もうすぐ無くなるでしょう……」

「それはどう言う事です?」

あの家は確かに、借金の形に奪われたのはわかるが、無くなると今わかるのは……

「あの家を壊して、何かの施設を作るらしいです……その為に、何度かお父さんを尋ねて、来ていたけど……」

嫌な予感がした。

「それからかな……お父さんとお母さんが、よく喧嘩するようになったの……」

私は頭を悩ませた……これは計画されて起きたものだ……あの兄の行方不明も……

そして、何よりも、その為に義姉さんが死んだのか……

「だから……母さんが死んだのが、凪にはきつくて……それで……朱鷺さん?」

私は……話しかける楓さんの事が耳に入らず……部屋へと戻った。




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