相変わらず仲が良く、相変わらず友達

湊とえりは、この春、西高校に入学した。

西高は、市で3番目のランクの学校で、制服はなく私服で登校する。

そのせいか、湊はもちろん、えりも急に大人っぽくなった。


高校も、湊はクラスのいわいる一軍というやつで、えりは、割と大人しいグループに入っているので、何となく接点がなく、学校ではまた距離をおいている。


春乃と孝司は、小学生になった。

幼稚園の頃は遊ぶとき兄姉同伴だったが、小学生になってからは、一人でお互いの家を行き来している。

なので、前みたいに、湊はえりの家で話したりする事は、ほとんどなくなった。 


でも、2人仲が良いのは、変わらずだった。


湊は、サッカー部だが、合間に絵理のいる美術部に遊びに行く事が多かった。


「孝司とは、うちで会ってるけど、えりとは会わなくなったね」

「そうだね。クラス違うしね」

「ま、ここで会うけどね」


「絵、楽しい?」

「うん。湊も描く?」

えりは笑った。

「えりの顔、描く。黒で…」

「そんなに腹黒じゃないもん。湊の方が絶対黒い」

「そうだよ。隠すの大変」

「あははっ」

仲の良い友達という事は、中学では秘密にしていた。

高校に入ったら、普通にしても良かったが、湊の腹黒い性格を知っているのは基本えりだけで、それを隠すために、やはり、友達関係だということは美術部メンバーくらいしか知らない。


えりは相変わらず、2年間会えもしなければ、電話も手紙もNGの超過酷な遠恋真っ最中だった。

パブロへの想いも相変わらずで、湊への思いも相変わらず友達のまま。


「じゃ、練習戻るわ」

湊は椅子からヨッと立ち上がった。

「うん。頑張ってね」

「うん。バイバイ」

2人は手を振って別れた。



湊が家に帰ると、孝司が遊びに来ていた。「お、いらっしゃい」

「お邪魔してます」

「何、大人〜」

湊は孝司にからかうように言った。


「ね、明日えりちゃんの誕生日だよ」

「うん、そだね」

「お祝いしようよ」

「愛花ちゃんと圭太と遊ぶって言ってたよ」

「うちの家族でも、お祝いするから、春乃も湊君も来たら?」

孝司が誘った。

「俺パス」

「なんでぇ?」

春乃は不満そうだ。

「…猫かぶるの面倒くさい」

「あぁ」

孝司は納得した。

湊は孝司をジロリと睨んで、軽く頭を叩いた。

「春乃だけ行ってきなよ。送り迎えしてやるから」

「うーん、わかった…」

春乃はお兄ちゃん子なので、1人で行くのは寂しいと思っていた。


「孝司、パブロ君、いつ帰ってくるの?」

「知らないけど。でも絶対帰ってくるよ」「そ…」


これが、湊が谷川家に行きたくない理由の一つでもある。

湊いわく、谷川家は全員パブロ信者だ。

パブロの事を好きだというえりの姿を目の当たりにしたくない。


(不毛な恋すぎる…)

湊は、ため息が出た。

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