パブロ目線の 湊 (読み切り)

〜湊とパブロの出会い〜

(17話 湊の結論〜パブロ目線)


パブロとえりは恋人同士だ。

2人は2年間、遠恋をしていた。

そして、その遠恋中に湊とえりは仲の良い友達になっていた。

えりのもとに帰ってきたパブロ。

パブロと湊の初対面は…?





ピンポーン。

谷川家のチャイムがなったので、パブロは玄関を開けた。


「あ、どうも」

玄関にいた男はそっけなく挨拶をした。

(…これが、えりが仲いいって言ってた小林湊か…)


「あの…、春乃は…?」

「あっ、今、孝司とゲームしてて。少し待ってもらっていい?」

「お世話かけます」

「……」


パブロは湊を観察した。

(悔しいけど、ずいぶんなイケメンだな…)

湊は自分が見られてるのに気がついていたが無視をした。


「えりと仲いいの?」

パブロは単刀直入に聞いた。

「…そうだけど」

「そっか…」

パブロは嫉妬が顔に出ないように必死だった。

「…えりのこと奪おうと思ってた」

「え!」

(なんだと…)

「えりの事、好きだ」

(イケメンは自信があってイヤだよ。タチが悪い…)

パブロは思った。


「告白はしたの?」

「あんたが帰ってこなかったら、しようと思ってた」

(ん…?…全然奪おうとしてないじゃん…)「真面目だね…」

「腹立つなぁ」

(…腹立つとか…、ハッキリ言うんだ…)


パブロはまた湊をじっと見た。

「何…?」

「いや…。…俺が帰って来る前に湊がえりに

告白してなくて良かったなって…」

パブロはなんとなく湊に好感がもてて素直にそう思っていた。

「腹立つな」

「あはは」

「なんだよ」

「あ。ごめん。告白されてたら、ホントどうなってたかわからなかったなって」

「わかるだろ。何にもなって無かったよ」

「いや…わかんなかったよ」

(えりと仲いいのわかる気がする…)

「バカにしてんの?」

「してないよ」

「嫌なヤツだな」

「だから、バカになんてしてないって」

パブロは笑った。



「湊って、話しやすいね」

「え?」

「話しやすい」

パブロはニッコリ笑った。

「はい?」

「見た目がイケメン優等生ぽかったけど、全然そんなんじゃないんだね」 

「悪かったな」

「いや、そんなやつだったらムカついてたと思う」

「…俺は、あんたの方がそういう系だと思ってた」

「あはは。全然。えり、俺の事、意地悪とかわがままとか言ってなかった?」

「あんたの事は全然聞いてない。知りたくなかったから」

「そっか。そもそも、俺、自分の家を追い出されたから、谷川家にお世話になってたんだよ」

「そうなの?」

「うん。じいちゃんにブチ切られてね」

「…ふーん。ヤバいね」

「ね」

パブロは笑った。

「…えりはあんたのどこが良かったんだ」

「さぁ」

「…ムカつくな」

「あははっ。だよね」

湊はパブロにつられて少し口角が上がった。


「パブロ君て、性格、アレだよね」

「アレ?」

「悪いね」

「お前だろ」

「俺は腹黒。ちゃんと隠して生きてるから」

「ふ~ん。それ偉いの?」

「自分をそのままだして、人を傷つけるよりよっぽどいいだろ」

「…のわりには、俺には、口、悪いよね…」

「…あ…」

「ん?」

「あれ?」

「…何?」

パブロは湊が黙ったので、不思議に思っていた。



長い沈黙のあと湊がしゃべり出した。

「俺、話しやすい?」

湊はパブロに聞いた。

「え、うん」

「じゃ、今度遊ぼうよ」 

「え?」

「…話しやすいって言ったよね?」

「うん」

「…あー…。意外な所に、本性だせる人見つけた」

「…俺?」

湊はYESの返事の代わりに、にっこり笑った。


(へぇ、なついた…?)


(…コイツ、かわいいな…)


パブロは思わず笑ってしまった。


「じゃ、またね」

「うん」

(…ホントにライバルにならなくて良かった…)




その後の2人。


ピンポーン。

「お、湊、どうしたの?」

パブロの家に湊が遊びに来た。

「どうも。上がっていい?」

「いいけどさ、来る前に連絡しろよ…」

湊は聞こえていないかのように、ずかずかと

家に入った。


「これ」

湊は、パブロに紙袋を渡した。

「ん?」

「うち来た時、忘れていったでしょ?」

「おお、ありがとう。このパーカーなくて困ってた」

「パブロ君、服少ないもんね」

「うるせ」


「わざわざ、ありがとう」

「うん」

「湊、…どうかした?」

「うん…」

「彼女?」

「うん…」

「…また面倒臭くなった?」

「うん…」

「そんな簡単に付き合うなよ…」

「…最初にちゃんと確認とってんだよ?」「え?」

「ちゃんとは付き合えないって。お互い割り切って付き合おうって」

「大人の付き合いだね…」

「それなのに契約違反するから…」


「ふ~ん…大変だね」

「それだけ?」

「…俺、わかんないもん」

「だよね」

「ムカつくな」

「えりとしか付き合った事ないもんね」

「毎回、同じ事言うよな」

パブロは笑った。

「パブロ君をいじって、俺の気持ちを静めてるの」

湊もニヤッとした。

「えりには、相談しないの?」

「するわけないじゃん」

「…言えないか」

「…別に。何かアドバイスしてきそうでしょ」

「してきそう」

「やでしょ」

「やだね」

「パブロ君だけでいい」

「ふーん」

パブロはひねくれてる湊が、自分の前で素直になってくれて嬉しかった。


「えりが1ついい事したとするなら、パブロ君と付き合ったことだな…」

「ん?」 

「友達を連れてきてくれた」

「だな」

「…ん…?くっつけたの俺か…」

「あ…、そうだったね」

「なんだ。逆に感謝してほしい」

「あははっ。ありがとう」

「いいよ。これからも、いじらせてくれるなら」

「いいよ」

「パブロ君さ、意外と懐深いよね」

「そうだぞ」

「一見、子供みたいなのにね」

「おいっ」

「…また、えりとうち遊びに来てよ」

「うん」

「じゃぁね」

湊はスッキリした顔で帰っていった。


(…かわいいやつだな)


パブロは微笑んでパーカーをハンガーにかけた。







※えりとパブロの話は、

『彼は魔法使いで意地悪で好きな人』をご覧下さい。

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