もうすぐ帰ってくるの?

「あー、会いたいな…」

「誰に?」

湊が笑って聞いた。

「…、聞かれた…」

「えり、声大きいんだよ」

放課後、湊がえりのいる美術室に入ってきた。


「久しぶりだね」

「うん」

「パブロ君もうすぐ帰って来るの?」

「うん、もうそろそろだと、思うんだけど」

「早く会えるといいね…」

「うん」

絵理は笑った。

湊はじっと絵理を見つめた。

「何?」

「初めて絵理のうちに、春乃と遊びにいってさ。パブロ君との仲介したこと思い出す」

「仲介っていうか冷やかし…?」

「…俺のおかげだと思うんだけど…」

「そうだね。その節はありがとう」

絵理は笑った。


「あんな仲介するんじゃなかったな…」

「何で?」

湊は心の声がもれてしまっていた。

「ん?人の幸せを祝える人間じゃないんだわ」

なんとか誤魔化した。

「そうかな」

「え?」

「湊って根が優しいから。春乃ちゃんと一緒にいるの見ると特に思う」

「優しさ滲みでてた?」

「うん」

「やめなさい」

湊は心を見透かされるのを嫌がる。

絵理は笑った。

湊も笑ったえりを見て、少し笑った。


「もし。パブロ君戻ってこなかったら俺が誰か紹介してあげる」

湊は、片ひじを机について、にっこり笑って言った。

「やな事言うな。でも、湊、紹介できるような友達いるの…?」

「俺、友達多いと思うんだけど…」

「…私に紹介できる友達?」

「紹介…?」

湊は考えた。

「…。いないわ…」

えりは笑った。

「…じゃ、部活いくわ」

湊は不満そうな顔をして言った。

「うん、またね」

「…また明日」

「明日も来るの?」

「友達いないから」

えりは笑った。

湊も笑って美術室を出ていった。

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