告白する?しない?湊の決意

湊は、えりの彼氏のパブロがいつ外国から帰って来てしまうのか、毎日ドキドキしながら過ごしている。

えりに振り向いてもらう、残り時間は刻々と過ぎていく。

なので、前よりも、えりに会いに美術室に行くことが多くなった。


「湊、土屋さんと別れてから、彼女できてないよね」

「ん?うん…」

湊は、美術室の机に、突っ伏している。

「うちのクラスの女子が、湊に告白したけど振られたって…」

えりはデッサンをしながら話す。

「だからさ、前に好きな人いるって言ったじゃん」

「まだ、好きなの?」

「うん」

「告白してないんでしょ?」

「だから、出来ないって言ったじゃん…」

「もったいないね」

「うるさいよ…」

「してみたら?」

「うるさいって」


2人は、黙ってしまった。

(告白なんてされたら困るくせに)

湊は、立って行こうとした。

「湊、ごめんね」

「うん…。また明日」

「うん」

「嫌そうな顔しないの」

湊は、笑った。

2人は手を振って別れた。


湊は、今年中にパブロが帰って来なかったら、告白しようと決めていた。

逆に、それまでは、告白はしないと決めていた。

(自然に好きになってくれるのが一番なんだよな…。無理かな…)


「あれ?えりは?」

湊は、美術室に行ったが、えりはいなかった。

「えりちゃん、今日は早く帰るって。小林君に伝えといてって」

同じ美術部の女子が言った。

「そっか。ありがとう」

(なんだ…)


次の日の朝、えりが湊の教室に来た。

「湊、湊…」

廊下から、小さな声で湊を呼んだ。

湊は、びっくりしながら、廊下に出た。

「びっくりした…。どうしたの?」

「パブロがね、帰ってきたの!」

「…そっか、良かったね」

「ごめん、嬉しすぎて言いたくて」

「うん、良かった」


「湊、はよ」

同じクラスの友達が、教室に入る所だった。

えりを見て立ち止まる。

「4組の…?」

「あ、そう。谷川。中学一緒でさ…」

湊が説明する。

「へー」

友達はニヤニヤした。

「友達だから…」

(今、この瞬間の友達宣言、悲しすぎる)

湊の友達は、湊の肩をポンと叩いて教室に入った。

たぶん、片思いだってわかってるんだろうなと思って、湊は、泣きそうになった。


(ハァ…。終わった…)

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