腹黒男子は遠恋中の彼女に片思い
Nobuyuki
小林 湊の片思い 始まり
小林湊14歳は、クラスの中心人物で、頭も良く、イケメン。
まぁモテる。
湊には9歳下の妹、春乃がいる。
両親は共働きで、帰りが遅く、湊が春乃の面倒をみている。
春乃は、湊よりもさらに顔が整っている美少女だ。
だからという訳ではないが、湊は春乃を溺愛している。
「お兄ちゃんの学校にね、孝司のお姉ちゃんも行ってるんだって」
"孝司"とは、春乃の幼稚園の友達だ。
「そうなの?何年?」
「たぶんお兄ちゃんと一緒」
「へぇ、名前は?」
「谷川なんとか」
「…うちのクラスに谷川えりっていう、女子いるよ。その子かな…」
「同じクラス?すごい!皆で遊べるね」
「ほとんどしゃべった事ないもん」
「私、孝司と遊びたい!」
「幼稚園で遊べよ」
「足りないの!」
「好きなの?」
「うん」
「そっかぁ。春乃の恋の応援したいしな…」
「恋?」
「孝司君のことが、大好きってこと」
「うん、大大大好き」
春乃は今までにないくらいのキラキラした顔で言った。
「谷川に、声かけてみるか…」
「わ~い、やった〜」
「遊べるかはわかんないぞ」
「…」
春乃はすねた。
(谷川って、愛花ちゃんとべったりだから、話しかけづらいんだよな…)
次の日、湊は学校でえりを観察していた。
(また、愛花ちゃんと一緒だ…)
二人の話してる声はほとんど聞こえなかったが、
「えぇ!すごいじゃん」
愛花の驚いた声が少し聞こえた。
(なんだろ…?)
「湊ー!昨日の、サッカー見た?」
男子グループに呼ばれて、湊は、その輪に入っていった。
「見てね」
「えー、もったいねえ」
「昨日は寝ちゃってさ」
「寝んなよ」
「どうだったの?」
「ロスタイムで、逆転勝ち。ヤバかったよな?」
「へぇー。見れば良かったー」
「湊って全然テレビ見ないもんな。何してんの?」
「ん?寝てる」
「寝すぎ!」
皆ゲラゲラ笑った。
本当は、湊が料理を作って、掃除して、春乃の相手をしたり、忙しいし、テレビを見るとしたら、アニメか子供用バラエティになってしまう。
湊は、そんな話を友達にはしなかった。
周りを羨ましく思ったら負けだと思っていたし、変に気を使われるのも嫌だった。
放課後、湊はえりが1人で帰って行くところを見かけた。
(おっ、チャンス)
湊はえりを早足で追いかけた。
教室の方から、叫ぶ声が聞こえた。
「湊ー!今日掃除当番だぞー」
「あー、腹痛くて!俺明日やるから、交代して」
「しゃーねーな。じゃ、バイバイ」
「おう、じゃあな」
湊は走って、一度は離れたえりとの距離を縮めた。
湊は、前を歩いていたえりに話しかけた。
「あのさ」
振り返ったえりはびっくりしていた。
(たいして話したこともないから、びっくりするよな…)
「あのさ」
「何?」
「谷川って、小さい弟いる?」
「?いるよ。幼稚園の年中…」
「あ!やっぱり!小林春乃って知らない?俺の妹で同じクラスだと思うんだけど…」
「え?そうなの?!にじ組?」
「そう!にじ組!」
えりは驚いたあと、嬉しそうに笑った。
湊は、えりの横について歩き出した。
「うちの妹が、たかし君と仲良いみたいでさぁ。一緒に遊びたいって、うるさくて。今日とか、時間あったら、遊べないかなぁ?」
湊は、無理を承知で聞いてみた。
「あー、うん、いいよ」
「ホント?やった」
「孝司が、幼稚園で誰と仲が良いとか全然知らなくて。春乃ちゃん?と仲良かったんだね」
「俺も昨日知ったの。孝司君と遊べるって言ったら、春乃喜ぶよ」
湊はホッとした顔で言った。
「でも、今日天気悪いよね。ウチくる?」「え、家行っていいの?」
「うん。あ…、家にもう一人いるけど…、大丈夫?」
「俺等は全然。谷川が大丈夫なら」
「じゃ、そうしよっか。孝司、喜ぶよ」
「じゃ、家まで道覚えがてら送っていく」
「あ、うん。ありがとう」
えりは、湊に笑いかけた。
(…普通に、かわいいじゃん)
「家、ここから近い?」
「10分くらいかな」
「まぁまぁ遠いね。道、覚えられるかな…」
「前にある、セブンを曲がってまっすぐだから。大丈夫」
「良かったぁ…」
「…?」
「俺…すごい方向音痴なんだよ…」
「意外」
えりは、笑った。
帰り道、湊は、えりが数年前に両親を亡くしていた事と、それ以後、孝司の世話係をしている事を知った。
湊もまた、両親が共働きで帰り遅いから、湊が春乃の世話係をしている。
両親の事は別だが、小さい妹、弟の世話をしなければならないという共通点があって、しかも、妹、弟の仲が良いという偶然に驚いた。
湊は、えりと別れた後、春乃を幼稚園まで迎えに行った。
「春乃、今日、孝司くんの家行ける事になったよ」
春乃と帰り道を歩きながら言った。
「やった!」
「ちゃんと行儀よくしなよ?」
「うん!じゃ、急いで帰ろう!」
春乃が急にダッシュするから、湊も慌てて追いかけた。
「おい、転ぶぞ」
湊は笑いながら、春乃を追いかけた。
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