第4話 レッドピース

許せないモノばかり増えていくなこの世界は。

俺は考えながら額に手を添えてみる。

それからゆっくりと屋上にやって来る。

ドアを開くと結菜が居た。

此方に手を振りながら笑顔で居る。


「ゆうちゃん♪」


「結菜。まあさっきぶりだな」


「そうだねぇ」


満面の笑顔で、えへへぇ、と返事をする結菜。

俺はその姿を見ながら笑みを浮かべて買った飲み物とお弁当を取り出す。

それからパラソルの下。


ご飯をまさに食べ始め.....ようとした時。

結菜が深刻そうな顔をした。

そして俺を見てくる。


「.....どうしたんだ?結菜」


「ゴメンね。その。気のせいだけど何かあったの?.....その。よーちゃんと」


「ああ。その事か。アイツも調子が悪いんだろ。多分。部活動とかでな」


嫁子の部活は運動部だ。

陸上部だったかな?

だからそのあちこちを走っているが。

もう応援はしないつもりでは居るが.....。


浮気をした奴の事は知った事では無い。

思いながら俺は結菜を見る。

そしてこう返事をした。


「結菜。嫁子は良い子かな」


「え?良い子だと思うけど.....」


「.....そうか」


「とても愛らしいっていうか」


「.....そうだな」


俺は顎に手を添える。

そして考える。

でも考えてもやっぱり浮気現場が錯覚だとは思えないんだよな。

思いながら俺はご飯を見る。

困ったもんだな、と思っていると結菜が切り出した。


「もしかしてその事もあるのかな。この場にその。よーちゃんを呼ばなかったの」


「.....!.....いや」


「ゆうちゃんとよーちゃんは付き合っているんじゃないの.....?」


「え?!」


ブハッと吹き出す俺。

すると、あ。やっぱり見ていたけどそういう関係なんだぁ、と嬉しそうにする結菜。

俺はその姿を見ながら、まあそうだな、と頬を掻く。

だが、と思っていると。

そうしていると、でもそれだったらこうなっているのは喧嘩でもしたのかな、と結菜は向いてくる。


「.....結菜。誰にも言わないって約束出来るか。それから嫁子を一発も殴らないと約束も出来るか?」


「え?それは.....?」


「嫁子は俺を裏切って俺の友人と浮気したみたいでな」


「.....え.....」


結菜は唖然としておかずを落とす。

それから愕然としながら俺を見てくる。

俺はその姿を見ながら空を見上げてから、事実だ、と語る。

すると結菜の目付きが表情が無くなった.....というか変わった。

具体的にこうなった。


「.....本当か?」


と物凄い目つきになり不良の様に返事をする。

俺は、!?、と思いながら結菜を見る。

何だこの結菜.....?!初めて見たぞ。


思いながらビクッとしていると結菜は、それって裏切りと違うか?、と言い出す。

は、はい?、と思いながらガタッと立ち上がる結菜を見る。

何をする気だ!?


「我慢出来ないね。殴ってくる」


「ゆ、結菜!ダメだ!それは!!!!?ダメって言ったろ!」


「じゃあどうしろっていうの」


「お、落ち着け!何でお前.....そんな!?」


「浮気は嫌って言っているんだけどね。.....殴らないと気が済まない」


確かに駄目なものは駄目ではある。

だがその。

だからと言って暴力も良くない。

寧ろ俺も結菜も全てが退学に追い込まれる可能性がある。


それだけは何としても回避しなくては。

思いながら結菜を見る。

結菜の目は釣り上がっており鬼神のごとくになっている。

めっちゃ怖いんやが.....?

マジに何これ?


「.....お前がそんなにキレるとは.....」


「それはそうでしょう」


「落ち着け。結菜。取り敢えずは復讐するのは前提でやっている。.....だけど今はそんな時じゃ無いから」


「それで良いの。裕」


怒りで呼び名まで変わっている。

俺は顔を引き攣らせながら、そうするしか無いだろ、と返事をする。

するとドサッと椅子に腰掛けた結菜。

それから足を組んだ。


その姿にちょっとだけホッとした。

だが目は釣り上がっており。

メドゥーサの様であった。


「裕。このままにするのは良くない」


「いやそれは分かるが俺達が退学になるぞ。殴ったりしたら非があるって事でな」


「それはまあ確かにな」


そして結菜は、チッ、と舌打ちしてからガァンと机を殴り飛ばす。

出血もしない鉄の拳。

ヒエェ!?、と思いながら結菜を見てみる。

結菜は、でも許せないね。これは、と嫁子の事をぶつぶつ言う。

俺はビクッとしていたが、確かにな、とそれには同調した。


「私は別に良い。別にどうなってもね。だけど裕の事が心配」


「.....そ、そうだな。.....でも手を出したらマジにおしまいだ。だからこそ考えないと。お前の思考は良くない」


「そうかな」


幸いにもこの屋上には俺と結菜しか居ない。

見られなくて良かった。

復讐を考えるのにも十分だろう。


思いながら結菜を見る。

結菜はずっと目付きがキツイままだった。

正直言って、人でも殺したんか、と言う感じだ。

俺はオズオズと聞いてみる。


「.....お前は不良になったら怖いだろうな.....」


「私は一応不良チームのヘッドだったしね。レッドピースの」


「あぁ!!!?!この街の有名な不良チームか!?初耳だぞ!」


「そう。裕と嫁子とは一応、中3から絡んだけどそれまではこの街のレッドピースのヘッドだったから」


「いやしかもそれって暴走族だろ.....」


「実際にナイフで刺されそうになった事もあるしね」


暴走族てメチャクチャ予想外なんだが、と思って唖然としていると。

まあどっちでも良いけど。

今はこれだけ落ち着いているけど。

タイマン張っても良いぐらいだからそれ、と結菜が語った。


「それぐらい浮気は絶対に許せないから」


「ま、まあ有難うな。そんだけキレてくれて。ちょい怖いが、うん」


「.....私の事を怖がるのは当たり前。不良チームのヘッドだったから」


そして胸に一生懸命に手を添えて落ち着かせ。

空気が抜けた様に俺に、まあその。ゆうちゃん。そういう事だから。ちゃんと話し合ってね、と笑顔で反応をする。

俺はその姿に、お、おう、と反応してから結菜を見る。

結菜はニコニコしながら俺を見ていた。

正直メッチャ怖い.....。

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