第7話 温かいスープ

まあとは言っても。

実際に殴るとなっても傷害罪などで此方側が捕まれば意味無いと思うから殴りはしないがこの場で土下座はさせる。

絶対にさせるから。


そんな固い意志で嫁子は話す。

俺はその姿を見ながら、そうか、と目線を真っ直ぐに話した。

すると嫁子は俺に向く。

それから頭を下げた。


「でも先ずは反省というか。.....君を大きく傷付けたりした事はもう幾ら謝っても謝りきれないから.....」


「.....だな」


「私は初めから出直すよ」


「そうか。まあ頑張ってな」


俺は嫁子を柔和に見る。

そして目の前のスープを見てみる。

鶏ガラ出汁のスープだ。

ちょうどほうれん草が入っている感じである。

温かいスープ。


「まあ俺の事はそうとして。.....お前に悪い事をしたのは優だけかな」


「分からないね。優さんは兄妹って聞いたけど。というかどういう意味?」


「まあそうだな。優は兄妹って聞いた事はあるが。両方共にドクズだと思う。嘘を吐いている可能性はあるな。信用ならない.....」


「私は優さんの妹さんに関してはドクズな事をしているとは思いたく無いけどね流石に」


「そうだな、うん。俺も思いたくはないが.....でももう信用出来ないだろ。優は」


そんな感じで俺はスープを飲んでみる。

これは温かいし良い味付けだ、と思える感じだ。

そして嫁子を見る。

嫁子もスープを飲んだ。

それから、美味しい、と微笑みながら呟く。


「なあ。お前の母さんは.....その。今でも水商売なのか?聞き方が悪いけど」


「水商売だね。でも身体を売る商売じゃ無いけど。.....例えば売春婦とかじゃない」


「ああ。分かっているけど。でもまあ.....その。お前と唯子ちゃんを守る為なら何でもするだろうから」


「まあそうだね」


そう返事を聞きながら居ると疲れて横になって寝ている唯子ちゃんが、うーん。お姉ちゃん.....お母さん.....、と寝言を言った。

俺はその姿を見ながら嫁子を見る。

嫁子は複雑な顔をしていた。

そして、ここ最近はそんな感じだから。何時も、と言葉を発する。


「かなり深刻だよ」


「そうなんだな」


「でも私のせいだよ。全部。だから申し訳ないなって思うから本当に」


「お金はお前のせいじゃ無いだろ。.....取り敢えずこうなっている以上はどうにかしないといけないだろう。一時的にも。信子さんの事も考えないとな」


「そうだね有難う。心配してくれて」


「無理矢理なんて気に食わない。.....優は最低だな」


「無理矢理の契約だった。.....というか仕方が無かったからね。私が全部悪い」


苦笑する嫁子。

俺はその姿を見ながら唇を噛む。

それから眉を顰める。

どうしたものかなここから先は。

そう考えてしまう。


「借金取りはソフト闇金なのにこの家に来ないのか」


「今は来てない。その。生活がかなり苦しいけど払えているから。.....でも利息が凄すぎて話にならないけどね」


「そうだな。確かに」


「だからその利息をどうにかしたいんだけどどうにもならないからね」


俺は専門外。

だからよく分からないがやはり警察に訴えれば良いのでは、と思って言ったが。

嫁子は首を振ってから、そうだね、と自嘲する様な笑みを浮かべる。

俺はその言葉に嫁子を見る。


「.....いつか訴えるよ。今は疲れているから」


「お前が訴えるなら俺も頑張るから」


「住所も家族構成も全部分かっているから。直ぐに訴えるなら動かなきゃだけどね」


「.....それは本当か」


「住所とか免許証とか全部分かるみたいだから」


「母親の住所って事か?」


「父親が提示したんだよ」


そう言いながらカタカタと手を震えさせて目の前を見る嫁子。

そんな姿を見ながら、本当に憎いんだな、と思ってしまう。

すると嫁子はハッとした様に、あ。スープが冷えちゃうね、と言い始める。

それからスープを慌てて飲み始める嫁子。

そして、アツッ、と言いながら小さな舌を出す。


「やっぱり熱かった。馬鹿だね」


「まあそう言うな。.....仕方が無いだろ」


「そうだね。.....あ。美味しい?」


「ああ。全然美味いよ。有難うな」


言いながら俺はスープを味わう。

何か言い忘れていたかもだが嫁子はかなり料理が得意だ。

それは母親が居ない代わりに良く作っているから、である。

俺はその事には尊敬するし、凄いなって思う。


「何か出来る事があったら言ってくれよ?嫁子」


「.....そうだね。でも私は1人で大丈夫だから。それに私が半分悪いしね」


「まあそうだが。でも今は反省しているしな」


そして俺はスープを飲んでから嫁子を見る。

そうしてから暫く雑談をしてから。

俺は帰宅の準備を始める。

取り敢えず今日は話を聞けたのが良かった、と。

そう思いながら。



「今日は有難うね」


「俺は何もしてない。お前の答えと真実を知りに来ただけだ」


「うん。でもそれが嬉しかったよ。有難う」


「お兄ちゃん。またね」


「ああ。じゃあな。嫁子。唯子ちゃん」


そして俺は嫁子を見ていると。

背後から、あ、と声がした。

その言葉に背後を見ると.....そこに結菜が立っている。

食材を持っている。

スーパーの袋に入っている物だ。


「お、オイ。結菜。どうしたんだ?」


「.....昨日の件があったから。お詫びもあったりしたしね。だからちょっと買ってきたの」


「わざわざ良いのに。結菜」


「.....でも私も反省しないとなって思ったから。.....あんな態度を取ったのは良く無いって思ったからね」


結菜は神妙な面持ちで俺達を見る。

俺は、結菜。手伝おうか?、と聞く.....が。

首を振ってから結菜は反応した。

大丈夫だよ、と。

それから、時間も時間だし直ぐに帰るから。私も、と笑みを浮かべる。


「取り敢えずは家を開けてくれる?よーちゃん」


「あ、うん」


「.....うん。有難う」


嫁子は申し訳無さそうな顔をしながら家を開ける。

それから中に嫁子と結菜が入って行った。

俺はその姿を見ながら居ると。

結菜が振り返って来る。

そして、先に帰ってて。ゆうちゃん、と笑顔になる。


「いや。良いけど大丈夫か?その、お前ら喧嘩とかしないよな?」


「もう大丈夫。もう喧嘩しない。話し合いをする」


「そうか。なら良いが.....」


そして俺は3人を見ながら。

そのまま見送られてからそのまま嫁子の家を後にする。

それからゆっくり帰宅しながら空を見上げる。

今日も晴れているな一応。

そう思いながら。

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